東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。今回は、日本郵政グループや旭化成などの広告を手がける野澤幸司さんです。
はじめてコピー年鑑に触れたのは、僕が23歳か24歳のときの誕生日。当時お付き合いしていた女性が、誕生日のプレゼントとしてメモが書き込めるタイプのコピー年鑑(1999年のやつだったと思います)をくれました。
当時の自分は大学生でコピーライター養成講座に通っていたと思います。コピーライターに憧れていた僕に、そんなプレゼントをくれたその人は、今思えば素晴らしい女性だったなあ。コピーライターに憧れまくっていた僕は、その年鑑を読み込むことでさらにコピーに魅了され、本気でこの職種を目指すことになるわけです。今思えば一生を変えた一冊ですね。
もちろん年鑑に載っているコピーですから、どれもこれもいいものばかりで感動しっぱなしだったのですが、何よりすごいのは、そのコピーたちが今見ても過去の言葉に見えないこと。なんなら今こそ言ってほしい言葉がたくさんあること(予言の書……)。そしてその年鑑でキラキラしていたコピーライターの人たちが、20年の時を経た今もなお輝いているということ、否、輝きを増している人さえ……コピーは老化という概念とは切り離された場所にあるのかもしれません。
あまり写経みたいなことはやらなかったけれど、ときどき読みふけっては、言葉に乗って時空旅行に出かけていたような気がします。