私が茨城県の下妻一高の校長に就任して、まもなく3カ月が経とうとしています。校長の仕事として初めて経験する入学式や始業式を終え、学校行事も本格化してきました。校長の仕事は全て初めての経験ですので、ワクワク感と不安が入り混じった、なんともいえない感覚を体験しながら、これでいいのだろうかと、日々自問自答しながら校長職を全うしています。
そんな中でも、私が常日頃から意識しているのは、民間人校長がなぜこの学校に配置されたのか?という茨城県教育委員会の狙いを理解することです。この狙いをよく理解して、自分自身の役割を考えないと、私がこの学校で校長をやる意味が薄くなってしまうからです。そして、悩んだ時にはここに立ち返って考えるようにしています。
そんな私が特にいま、意識して行っているのが、全校生徒の前などで話をする「校長講話」の内容を、自分にしか出来ないネタを入れて説明すること。校長はとにかくいろんなところで話をさせてもらう機会が多いなと、思います。
校長講話では時事問題を取り上げたり、花王時代に経験した仕事の例を取り上げて、それを学校で私が伝えたい内容に置き換えて話をするようにしています。例えば、今回の始業式では、花王の事例をお話ししました。
花王は、「清潔な国民は栄える」を企業理念にしていたことにも表れているように、1890年に花王石鹸を発売して以来130年間、洗浄製品の開発と提供を通じて清浄文化の発展に貢献したいと考えてきました。「きれいにする行為は、空間・身体をリセットして新たな未来を迎えるきっかけになる」という日本における普遍的意識を確認し、この研究成果は「日本民俗学会第71回」(2019年10月12~13日、茨城県つくば市)にて発表されたことも話をしました。茨城で研究発表したということで、身近に感じてくれたらと思い取り上げてみました。
このエピソードを用いながら、始業式で私が伝えたいメッセージとして下記のように置き換えました。
・自分の身の回りはきれい(KIREI)にしましょう。(身だしなみ、机の中、ロッカーなど)
・学校の校舎内も清潔にし、教室や学校をきれいに使うことを心がけてください。
バスケットボール部の生徒は、自主的に朝の時間に掃除をしてくれています。そんな自主的に行動が出来る生徒が増えると、花王の研究であったように「新たな未来が必ず本校にもやってくるから心掛けましょう」というメッセージにしました。
「メリット」の広告コピーから校長挨拶を企画
5月4日(土)には、常総の早慶戦と呼ばれる定期戦が行われました。定期戦は1947年(昭和22年)に始まった、伝統的な行事のひとつです。定期戦での挨拶では、次のような話をさせていただきました。
コロナ渦で急速に進んだデジタル化・DX化の世の中ではありますが、デジタル化が進んだからこそ、大切なものがあると私は思っています。それは、「絆」や「愛」です。最近では推し活なんかも流行っていますね。
私が、学校に赴任する前は、花王で「メリット」商品開発の仕事をしていました。「メリット」は誕生からも54年を迎える歴史があるブランドです。そんな「メリット」のテレビや電車広告を見た時に、「家族と愛とメリット」というキャッチフレーズを目にしました。
私はこの言葉を見た時に、今の時代において大切にしなくてはいけないことだと思いました。それは、「家族への愛」だったり、「自分の母校への愛」を強める必要があると思います。校内の団結力を高めために、本校では、紫のスクールカラーで統一したTシャツを全校生徒分作り、127年の伝統ある風格を表現し、下妻一高のブランディングにもチャレンジしました。
そして本日最も育んで欲しいのが、伝統の一戦を交える両校への愛や絆です。これから始まる大切な時間を全力で戦い抜いて、青春を謳歌してください。
「もう2度と戻らない日々を、俺たちは走り続ける、明日もまたどこへ行く、愛を探しに行こう。」メリットのCFで流れているエレファントカシマシさんの楽曲です。お互い、悔いのない定期戦になる事を心から期待しています。
このような話をした理由は、社会問題や時事ネタ、企業活動に少しでも興味を持ってもらいたいという狙いがあります。勉強と社会問題や企業の活動(マーケティング)がどこかで生徒たちの中で結びついたら嬉しいかぎりです。