「ぜんぶとうふ化作戦!?」
池田さんがまた変なことを言い出した、と少し私の発言に免疫がついてきたメンバーの不安をよそに、当の本人は至ってまじめに立てた戦略です。
「ぜんぶとうふ化作戦」では50年以上にわたりアサヒコが培ってきた豆腐・揚げの製造技術を活かし、前菜・副菜・主菜・主食・デザートまでのフルコースを豆腐や大豆製品で楽しめるラインアップを開発しました。まさに「ぜんぶをとうふ化」したのです。
「ぜんぶとうふ化作戦」は、日本でプラントベースフードが広がらない状況を解決したいと考え、生まれた企画です。
前回記事
なぜ日本ではプラントベースが広がらないのか
「豆腐バー」の成長と時を同じくして、市場では「プラントベースフード」や「大豆ミート」という単語を見聞きする機会が増えていました。これらは文字通り植物由来の食品や食生活を指し、健康志向や環境問題への関心の高まりから、日本でも徐々に認知や商品が広がっています。
これまでも大手の畜肉メーカー、食品メーカー、ベンチャー企業からも様々なプラントベース商品がこぞって発売されました。情報感度の高いお客さま達は早速商品を試されましたが、残念ながら一般化には至っていません。ただこれは、決して商品が美味しくないからではないと思うのです。
新たな商品やサービスが普及するためにはキャズム(裂け目)と呼ばれる障壁を超える必要があります。革新的な技術や価値に素早く反応する層に続き、新しいものに対して少し慎重な層が追随することで大きな市場が形成されます。日本で「プラントベースフード」が広がらない要因は、このキャズムを超えられていないからだと私は考えています。
「持続可能で身体にも環境にも良くて美味しい!」と流行に敏感なイノベーターやアーリーアダプターが評価しても、それに続くフォロワー層は「なんだか正体のわからない特別な食べ物では?」と懐疑的な印象を持っているのが事実。そんな彼らの背中を押すものは、“新しさ”ではなく“安心感”です。このキャズムを超える牽引役こそが、我らが「豆腐」だと思うのです。
アサヒコが「ぜんぶとうふ化作戦」を始める際に立てた仮説。
日本の元祖プラントベースフードは「豆腐」?
年間に肉を100㎏以上食べるアメリカ人は、私がカリフォルニアのレストランで食べた 「Impossible Meat」や「Beyond Meat」のように肉を味わう感覚を残しながら、たんぱく質を植物性の食品に置き換えようとフードテックを発展させてきました。
一方、日本人1人当たりの肉消費量は40㎏程度。豆腐、納豆、味噌、醤油などの大豆製品も元来よく食べてきました。肉の代替という発想ではなく、豆腐をはじめとする大豆製品こそが日本における元祖プラントベースフードであるとも考えられるのではないでしょうか。
そんな日本古来の誇れる食文化を復興し、大豆製品を現代の食生活の中で利用しやすく進化させることが、日本における「プラントベースフード」の発展につながると考えました。これが「ぜんぶとうふ化作戦」の生まれた背景です。
「TOFFU PROTEIN」の品揃え。
店頭ではこれらを単品でバラバラと展開するのではなく、「TOFFU PROTEIN」という事業ブランドを冠し、お客さまがご自身の食スタイルに合わせてラインアップの中から好きな商品を選べるよう陳列。「健康的で持続可能な食習慣」をサポートする売り場を提案しました。
テレビ放映後、フック什器で売上が490%に
上記のような売り場提案を手助けするパッケージデザインや販促ツールの開発で、私が大切にしているのは5つの「S」です。お客さまの目線や意識は次の順番で動くと考えられます。
See(店内を見渡す)→Scan(何を買おうかな?)→Spot(気になるものに目が留まる)→Show Interest(興味を持つ)→Select(選んでカゴに入れる)