OOH広告枠のプログラマティック取引最前線 インフラ整備が進む

この仕組みを簡潔に述べると「リアルタイムにオークションを行い最高入札額の広告を配信するシステム(※2)」になりますが、その大雑把な手続きとして、(1)媒体社はSSPにスクリーンの最低落札額となるフロアCPMをセットする、(2)広告会社(バイヤー)はDSPから実行したいキャンペーンの広告クリエイティブと広告予算や最低入札額、期間、対象のオーディエンスとネットワークをセットする、(3)媒体社がSSPで広告クリエイティブを承認すればコンピューターが期間内に広告キャンペーンを達成してくれるというわけです。要するに媒体社がSSPでスクリーンを提供して、バイヤーはDSPから広告出稿することができます。これにより、媒体社は色々な広告主からの掲載を受けられる可能性が高まり、バイヤーは色々な媒体社に広告掲載できるというメリットがあります。

そして、この売買はインプレッション単位にオークション形式によって行われるということです。今後、交通媒体社にSSPの導入が進んでいくことでバイヤーはDSPからインプレッションという共通単位で交通媒体を横断的に購入できるようになり、将来的にはメディアカテゴリ別に分断していた広告売買の統合も期待できるのかもしれません。スクリーンを予約枠として購入するのではなくスクリーンの視聴者をターゲティングすることによって媒体社とバイヤーの双方に透明性のある広告取引をもたらし、多様化していく購買プロセスに対応していくことができるようになっていくことが期待できます。

東京メトロのメディアは2020年9月中旬からプログラマティックDOOHによる「Metro Wall Vision」の提供を開始しており(※3)、いくつかのスクリーンをDSPから購入できるようになっています。同社は、以降もpDOOH広告プラットフォームで提供する媒体を増やしておりアーリーアダプタ―として交通広告取引の進化を先導しています。

現在、東京メトロのメディアをはじめ、いくつかの交通媒体は、提携先のDSPから購入できるようになっており、バイヤーがクリエイティブの入稿や広告キャンペーンの進捗確認、一時停止やレポートの出力など広告売買の管理と運用を行うことができます (※4) 。一例として、当社のパートナーはHivestack DSPから米大手コンピューター製造会社や欧州家具メーカーなどのキャンペーンを実施したことがあり、海外のブランドからもスムーズな広告配信ができるようになっています。

実データ グラフィック Hivestack DSPの配信画面

(参考)Hivestack DSPの配信画面(左がヒートマップ、右が時間単位の表示)

このように交通広告は、データとテクノロジーの融合によって確実に進化しています。私たち消費者が生活の中で進化を感じることはないかもしれませんが、駅や車両で目にする交通広告はデジタルサイネージシステムやネットワーク、データや広告テクノロジーなど多くの技術によって実現されています。これからは、電車内でスマホに表示される広告が降車駅で表示することができるような時代も訪れようとしているのかもしれません。この記事を通して、その進化の一片を知っていただく機会になれば嬉しく思います。

※1)インターネット広告が表示あたり1インプレッションに対してOOHのスクリーンには複数の視認者があるものとして計測、算出されます。日本では、一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムがオーディエンスデータの標準化に取り組んでいます。
※2)取引形態やオークション形式によって異なり、またDOOHのシステム環境に依存して取引単位が異なる場合もあります。
※3)メトロアドエージェンシーのプレスリリース「メトロアドエージェンシー、OOHメディア・ソリューション、LIVE BOARDの3社、東京メトロ駅構内のデジタルサイネージメディア「Metro Wall Vision」において LIVE BOARDマーケットプレイスを活用したデジタルOOH広告配信の実証実験を開始」(2020年9月30日)より
※4)媒体社により運用が異なり、また、広告審査と承認手続きは必要です。

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片岡裕紀

(Hivestack Japanディレクター)

かたおか・ゆうき/国産データベース暗号化ソフトウエアのベンチャーにプログラマーとして入社、プレセールスを経て経営に参画。アプライアンスメーカーでクラウドストレージとセキュリティ製品のプロダクトマーケティングに従事、スマートアグリにも携わる。映像解析プラットフォームのベンチャーを設立後、DOOHのプロダクトマーケティングを経て、2019年にHivestack Japanへ入社。

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