「伝えたい言葉」を起点とする売り方 学生が考案した生花販売の新形態、日比谷花壇

ポップアップストア「言葉を売る花屋」を展開

日比谷花壇は、「伝えたい言葉」を選んで生花を購入する新しい販売スタイルを学生と共同で開発した。「ありがとう」「がんばってね」などの言葉が記されたロッカーを開けると、対応する花言葉を持つ花が現れる仕組みを取り入れたポップアップストア「言葉を売る花屋」を渋谷でオープン。芝浦工業大学(東京・江東)のデザイン工学部デザイン工学科の学生が考案した購入フローで、日常的に花を贈る習慣を作るほか、これまで花を購入する機会が少なかった客層の獲得につなげる狙いだ。

写真 人物 営業本部リテール事業統括部の千島晶氏(左)と、芝浦工業大学4年生の保坂さん(右)

営業本部リテール事業統括部の千島晶氏(左)と、芝浦工業大学4年生の保坂さん(右)

場所は渋谷駅直結で様々な人々が行きかう「Hibiya-Kadan Style 渋谷ヒカリエ ShinQs店」(東京・渋谷)。期間は6月11~23日。色とりどりの花が並ぶ売り場でひときわ目立つのは灰色のロッカーだ。「ありがとう」と書かれたロッカーを開けると、「包容力」の花言葉を持つオレンジの「ベニバナ」と、「家族の結びつき」を意味するピンクの「アストランチア」が顔をのぞかせる。花を購入すると、オリジナルラッピングと共に対応する言葉が記された「言葉札」を持ち手に結び付けてもらえる。従来の生花購入フローと異なり、贈る相手に「伝えたい言葉」を、先に選んでもらうコンセプトとなっている。

仕組みを考えたのは芝浦工業大学の学生。日比谷花壇のグループ会社でプロデュース事業を手掛ける「イノベーションパートナーズ」が同大学の蘆澤ゼミと連携して実施した課題解決型授業の中で考案された。

授業はフラワービジネスを題材として、課題分析と新事業の企画を行うというもの。「日常的に花を贈る習慣を作る新しいビジネス」を考えるという課題で、学生がグループに分かれていくつかの案を企画。花を贈るきっかけづくりが必要と考え、「気持ちを伝える」ことに焦点を置いた「言葉を売る花屋」が採用された。同大学4年生の保坂宮朱さんは「授業の中で、花の売り方について考えるのは初めての取り組みだった」とし、花が売れる場所や購入目的などの事前調査を行い、今回のポップアップストアに最適な立地条件などを模索したという。

学生が提案した条件に当てはまる場所として、「Hibiya-Kadan Style 渋谷ヒカリエ ShinQs店」が選ばれた。単なるアイデアではなく「ビジネス」として成立させるため、売り上げを確保することも重視。新規客の獲得を狙い、花を購入する機会が少ない若者や男性もターゲットにしていることから、様々な人々が往来する「駅ナカ」を重視したという。

ポップアップストアでは、花屋にロッカーが置かれているという見た目の新奇性や、メッセージを伝えるというコンセプトが注目を集めた。「父の日」のプレゼント用に購入する人も多く、日比谷花壇広報室の中村友美氏は「手探りで始まった新しい企画だったが、想定以上の反響だった」と話した。保坂さんは「事前調査では花の主な購入層は30~50代の女性だったが、男性や、中学生の女の子が買ってくれてうれしい」と手ごたえを語った。

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