「フィジタル」が米国マーケティング界を席巻中 市場は216兆ドルに達するとの予測も

オンラインストアで商品を購入し、店舗で受け取る。チャットボットで質問して購入を検討する。アプリのAR(拡張現実)機能を使い、サイズや色を確認してから買う。これらの購買は店舗(フィジカル)とオンライン(デジタル)両方の体験から生まれたもの。この2つを組み合わせた造語「フィジタル」が、今マーケティング界を席巻し、投資会社LETA Capital社は2030年までにフィジタル市場は216兆ドルに達すると予測している。ブランド認知を高め、購買意欲をかきたてるフィジタル体験は消費者にとって不可欠になりつつあり、今後も多くの企業が利用すると予想されている。
※本記事は月刊『宣伝会議』7月号の連載「米国広告マーケティング事情」に掲載されています。

松本 泰輔氏

Coast to Coast Marketing Services 代表。AEとして約10年広告代理店に勤務後、1995年渡米。大学院卒業後、ニューヨークの広告代理店にて通信・金融・食品会社などを担当し、2005年独立。アメリカ東海岸を拠点にマーケティング、ジャーナリズム分野にて幅広く活動。2011年、宣伝会議より『フェイスブックインパクト』を共著にて発表。

ダイソンは掃除した場所をARでリアルタイムに可視化

家電メーカーのダイソンは4月9日、「掃除した場所をスマホで確認できるAR(拡張現実)ツールDyson CleanTraceを6月から導入する」と発表した。同社の掃除機にスマホを装着すると、掃除した場所は色つきに変わり、「まだ掃除していない場所」が一目瞭然に。「当社の調査では“約80%の掃除は10分以内で終わる”が、顧客は“平均掃除時間は24分間”と言っている。この差は同じ場所を重複して掃除するから。本ツールを使えば無駄なく効率の良い掃除ができる」と同社はWebサイトで述べ、CleanTraceで掃除する動画をSNSに投稿して「最先端の掃除体験を」と呼びかけている。

ダイソン製の掃除機にスマートフォンを装着し、ARアプリを作動させると掃いたところが紫色に変わる。色の着いていないところだけ掃除すればいいので、同じ場所を掃除する無駄がなくなる。

ワービーパーカーはスマホでお気に入りの眼鏡を試着

眼鏡のオンライン専門店として2010年に設立されたワービーパーカーは、競合に先駆けてデジタル販売戦略を強化。アプリで好きなフレームを選び、顔マークの印をタップすると、その眼鏡を試着した自分の顔をスマホで確認できる。

試着希望商品は最大5つまで送ってもらえて、試着期間は5日間。購入商品が決まれば、処方箋と眼鏡を返送し(送料は同社負担)、注文が完了する。気に入ったフレームが見つからない場合は、顔の形・好みのフレーム・好きな色・フレームの素材・処方箋の有無などをオンライン診断で回答すれば「お勧めフレーム」を15個選んでくれるので、その中から5つ選べば良い。処方箋がない場合はオンライン視力検査でつくってくれる(有料15ドル。NJ州など11州では不可)。

このように同社は「フレーム選び」から「試着」「視力検査」まで、スムーズな流れでフィジタル体験を供給する。

「ワービーパーカー」のアプリ「バーチャル・トライオン」を使うと、好きな眼鏡をかけた自分の顔を確認することができる。店舗に行かずに試着ができるので購入決断をしやすいと評判。

 
…この続きは5月31日発売の月刊『宣伝会議』7月号で読むことができます。
 
Amazonでの購入はこちら
楽天ブックスでの購入はこちら

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事