明治「Dear Milk」のスモールスタート戦略 あえて全国展開しなかった理由

明治
グローバルフードソリューション事業本部
フローズン・食品事業部 フローズンデザートG
吉岡征史氏

2007年 旧明治乳業入社。関東支社・関西支社でのアイスクリーム・冷凍食品事業の営業職を経験した後、2019年より現職。アイスクリームの事業戦略の他、Dear Milkやエッセルスーパーカップブランドのマーケティング業務を務める。

商品名:Dear Milk
希望小売価格:216円(税込)
主な販路:スーパーマーケット
(※2024年3月25日より全国展開を開始)

写真 商品 明治のミルクアイス「Dear Milk」

明治のミルクアイス「Dear Milk」が好調だ。乳製品以外、「何も足さない」がコンセプトの同商品は、発売以降1年間あえて全国展開をしてこなかったが、順調に売上を伸ばしている。その背景にあるのは、ロスなく確実に成果を生むスモールスタート戦略だ。

ただ、おいしいだけではない「何も足さない」ミルクアイス

──発売して1年を迎えた「Dear Milk」。どんな商品なのか、改めて教えてください。

「Dear Milk」は2023年3月に明治から発売した新しいアイスブランドです。当社にはロングセラーアイスブランドの「エッセル スーパーカップ」がありますが、約1年前に発売した「DearMilk」は乳製品のみでつくられたミルクアイス。乳製品以外、「何も足さない」をコンセプトにしている商品です。

開発の背景としては、アイスクリーム市場の状況や乳製品を取り巻く環境など、さまざまな要素が重なったことが要因としても大きいです。当社ではもともと、アイスクリームカテゴリーから新ブランドを出そうという話が進んでいました。ですが、市場を見渡してみると、当社には「エッセルスーパーカップ」もあれば、他社にも競合の商品が多くありますよね。要は新ブランドを出すにあたって、何を切り口にして差別化を図るかということが大きな論点だったのです。

そこで行き着いたのが「素材」。つまり乳の存在でした。当社は旧商号が明治乳業ということもあり、製品の素材となる乳や、その乳を上手く使った製法は得意分野。その強みを存分に生かすべく、乳製品の力を前面に打ち出して市場を創造していけないかという考えのもと生まれた新ブランドが「Dear Milk」です。

さらに、ちょうど開発を検討していた頃に社会課題になっていたのが、牛乳の廃棄問題や若年層の牛乳離れ。そういった乳製品を取り巻く環境も相まって、ミルクという素材に焦点を当てた経緯もありましたね。

ミルクアイスは市場にも多く出回っていますが、「ミルクアイスといえば?」と聞かれて必ずと言っていいほど出てくるような王道ブランドは、まだ存在していない印象です。「ただおいしいだけではない、社会課題も解決するサステナブルなアイス」として打ち出すことで、市場の中でも“新しさ”を提案していけるのではないかと思い、開発に踏み切りました。

写真 商品レイアウト

ロスなく確実に成果を出すスモールスタートな販売戦略

──発売から1年、当初の計画の2倍の推移で成長していると聞きました。どのようにプロモーションを進めてきたのでしょうか。
「Dear Milk」は、発売と同時に広くマスに対してプロモーションをするというより、スモールスタート的に販売戦略をとってきたブランドです。販売する地域を、段階的に増やしてきたのには、この戦略が背景にあります。具体的には、2023年3月の発売当初は関東エリア。同年9月に中部・関西エリアへ拡大。そして、このほどの2024年3月25日に全国展開を開始したという流れです。

コロナ禍以降、広告に予算を割くことが難しくなったブランドも多いと思いますが、そんな中でも商品を定着させていくためのプロモーションや顧客を育成するためのコストは必要ですよね。そこで重要なのは、どれだけロスなく成果を上げていくかだと思っています。そういった考えもあり、「Dear Milk」では販売地域を絞って局地的にプロモーションを行うことで話題化を図ろうと考えました。

──そこで販売当初に行ったのが、「真っ白な広告」だったのですね。

そうですね。2023年3月に関東エリア限定で販売を開始した頃に実施したのが、渋谷駅構内に掲出した真っ白なOOH展開と、車両全体が真っ白になる車両ジャックでした。狙ったのは、「おいしいミルクアイスが、明治から新発売」を伝えるのではなく、「なんだこれ?」という体験を通して商品を知ってもらうことです。

というのも、「おいしいミルクアイス」「新発売」と訴求すると、他社と変わらない同質化したメッセージになってしまいます。なので、どうにかして、差別化を図る必要がありました。そこで考えたのが―――――

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