「アイラップ」のX公式アカウントで売上4倍に 影響力を高めた転機とは?

企業の公式アカウントを開設しても、初期は「投稿しても反応がない」「フォロワーが増えない」と戸惑う担当者も多いでしょう。しかし今や数万人、数十万人のフォロワーを抱える影響力の高い公式アカウントの担当者も、同様の経験をしてきました。どのような転機を経て、影響力を高めていったのでしょうか。

本記事では、フォロワー30万人以上を抱える岩谷マテリアルの公式Xアカウント「アイラップ【公式】」の事例を紹介します。アカウントの運用目的を商品売上の向上をはじめとした「事業成長」に置き、「売り場の確保」などSNS起点のリアル企画に発展。SNS開始から販売実績を約4倍まで高めています。その転機に迫りました。

※本記事は、『広報会議』(2024年8月号・7月1日発売予定)「企業のSNS活用 知っておきたい10のこと」から一部を転載した内容です。

Xの担当部署と人数: デジタルコミュニケーション
開設年: 2018年6月
フォロワー数: 32万1931人(2024年6月17日時点)
更新頻度: 1日数回
その他、運用中のSNS: Instagram

合成樹脂や金属などの専門商社で、メーカー機能も有する岩谷マテリアル。主力商品で冷凍と加熱ができるポリ袋「アイラップ」の名を冠した公式Xを運用している。

アカウントの運用目的は商品売上の向上をはじめとした「事業成長」に置き、SNS上の反響を狙うだけに留まらない。

「当アカウントは開設当初から一貫して、事業の成長に結びつけることを目的としています。すべての施策の基準は『売上につながるか』。企業のSNS運用において本質的な目的を見失わないことが重要でした」(SNS運用責任者坂本英明氏)。

3カ月限定の運用予定

ただ事業へのインパクトにつなげるにはまず、SNS上で話題性を高める必要がある。同アカウントはどのように発信力を上げていったのか。

開設は2018年6月。当初は、アイラップシリーズの新商品「おにぎりぽっけ」の宣伝のために始めたものだった。同商品は“ご飯に直接触れずにおにぎりを握れて包める”シート。「用途としての新規性を伝えなければ、販売しても売れる見込みがない」。そうした危機感がアカウント開設につながった。

ただ当時、企業のSNS炎上が目立っていたことから、社内ではそのリスクについても議論された。その結果、「3カ月限定」として運用を開始。アカウント名は「アイラップ」とし、シリーズのユーザーを取り込む方針に。

まずは「アイラップ」で検索し出てきた投稿にいいねを押そうとした「中の人」だが、「『アイラップ』に言及した投稿がほぼない」ことに気づいた。「アイラップ」は当時、全国的には知られていなかったものの、北陸地方では「どの家庭にもある商品」だったため投稿数の少なさに驚いたという。

その状況を逆手にとり、2018年7月に「#一般の方が時々誤解しておられること」とつけて、“ボヤき” 投稿をした。「アイラップは全国区商品。(中略)ただ売上の75%が新潟、山形、富山、石川、福井に集中しているだけなの…。すごく便利なんだけどなぁ…。(後略)」。

するとまず「アイラップが全国区ではない」ことへの驚きから、北陸地方のユーザーが拡散。「アイラップって何?」「便利なの?」と認知していない層からも注目され、1万3000以上のリポスト(当時、リツイート)数を記録。

SNS運用の第一の転機となった。またこのバズにより、公式Xの運用が社内にも認知され、運用期間が延長。いくつかのバズを経て常用アカウントとなった経緯もある。

企業間コラボで売り場展開も

その後「中の人」が集うイベントなどを経て、他企業の公式アカウントと積極的にやり取りを重ねた同社。SNS発祥の協働企画を実施するようになったのが第二の転機となった。

象徴的なのは…

 
 

続きは、『広報会議』(2024年8月号・7月1日発売予定)「企業のSNS活用 知っておきたい10のこと」 からお読みいただけます。

本特集では、このほかにも様々な企業のSNS活用事例を掲載しています。ぜひ、自社のSNS活用に役立ててください。

広報会議 2024年8月号



特集 SNS活用 知っておきたい10のこと
1 データで見るSNS活用法
若年層のSNS利用実態と価値観に迫る
工藤永人 電通
 
2 Z世代のSNS活用のリアル
好感を抱く企業アカウントの投稿とは?
大学生4人に聞いた、SNSの使い方
 
3 フェイク情報の脅威と備え
SNSで「偽情報」が拡散
その時、広報担当者が取るべき行動とは?
小笠原盛浩 東洋大学
 
世界で広がるフェイク情報の被害
対策の現在地と企業にできること
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4 生活者の声に向き合う姿勢が企業イメージに
「フライパンをご提供いただけませんか」
味の素冷凍食品のあの返信の裏側に迫る
 
5 人気アカウント、転機はどこに?
軌道にのった投稿と思考法
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木村鋳造所/金津屋
 
6 投稿事例に学ぶ
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コクヨ/ヤンマー/オリバーソース
 
7 コンテンツを絶やさない極意
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海外メディアにLinkedInでアプローチ
焼酎の魅力を広げる、濵田酒造
 
8 必要な専門スキル
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