TOB問題で取材が過熱、ファクトブックをもとに200人近い記者に説明した経験
西武ホールディングスの10周年誌(2016年)では「負の歴史」を克明に記した。これは広報部が作成したファクトブックの内容が元になっている。
資料提供:西武ホールディングス
それから10年近く経った2013年。西武ホールディングスは米投資ファンドからTOBをかけられます。そこで1回目のコラムでも話をしましたが、現在西武ホールディングス社長を務める西山隆一郎さんのもとで危機管理広報(守りの広報)について基礎から鍛えられました。
当時、西武ホールディングスは上場を目指しており、広報活動の一環として、2004年の事件を境にグループがどのように再編し、後藤高志社長(現・会長兼CEO、西武ライオンズオーナー)が「いつ、どの場で、どのような発言をしたのか」といった内容が記された70ページに及ぶ基礎資料を、広報部で私がまとめていました。
西武ホールディングスの10周年誌(2016年)から。2013年6月、サーベラスの株主提案があった株主総会後の囲み会見の様子が記録されている。後藤社長(当時)の左後ろにいるのが筆者。
資料提供:西武ホールディングス
TOBが公表されたのは2013年の3月でしたが、その前年末から西武ホールディングス本社に記者たちから問い合わせが相次ぐようになりました。そのとき「基礎資料をメディア向けに説明できるようなファクトブックにしてほしい」と西山さんから指示があり、一部修正をして、初めて西武グループの取材をする記者でも理解できるように編集しました。
当時は、200人近いメディアが取材に訪れており、日々目まぐるしいなか、ファクトブックをベースに長い時間をかけてレクチャーしました。
メディアからも「短期間でキャッチアップできた」「辞書代わりになった」と言われ、非常に重宝されました。メディアに背伸びせず、清々と事実を伝え、社内外にも誠実に対応することで、ネガティブなことも対応によっては企業イメージ向上の武器になり得ると教わった一コマでした。