「BeReal」が7月から広告事業を開始 若者に人気の“映えない”SNS、新CEOのAymeric Roffé氏に聞く

6月にフランスのVoodooが5億ユーロで買収した、“映えない”SNSとして若年層に人気のSNSの「BeReal」が7月から広告事業を開始する計画だ。

“映えないSNS”として、日本でも急速にユーザーを獲得しつつあるフランス発のアプリ「BeReal」。アクティブユーザーは世界で4000万を超え、フランスをはじめとする欧州、アメリカ、さらに日本で若年層を中心に広がっている。

そのBeRealを6月11日(フランス・現地時間)、フランスの大手モバイルアプリ・ゲーム開発会社Voodooが5億ユーロで買収した。今後、Voodooの世界的なプラットフォームと専門性を活かすことで、ユーザーに対しては新機能を開発し、提供していく予定。加えて、企業に対してはオーガニックマーケティングだけでなく、広告をはじめとする有料のマーケティング支援を通じ、BeRealの事業成長を目指していく計画だという。

新しくBeRealのCEOに就任したAymeric Roff氏に、広告事業の展開はじめ、日本市場での展開を聞いた。
写真 人物 オンラインで取材に答える、BeReal 新CEOのAymeric Roff氏

BeReal 新CEOのAymeric Roff é氏。

━━日本でも特に若年層を中心にBeRealが浸透しています。多種多様なSNSプラットフォームが存在する中で、新興のBeRealがユーザーを獲得している理由をどう分析していますか。

BeRealが支持される理由は、フィルターがかけられていない素の状態で家族や友人など、身近な人たちとつながれることだと思います。世界的に見て、そうしたオーセンティックなつながりに対し、非常に大きなニーズがあったということではないでしょうか。

既存のSNSは加工もしやすく、コンテンツもリッチになっていますが、だからこそ逆にSNSのつながりに本物志向が求められ、真実のつながりが支持されていると考えています。

━━日本のマーケットをどう位置付けていますか。

BeRealにとって、日本は非常に重要なマーケットです。欧州、米国に比べると、ユーザーの間で流行り出したタイミングが少し遅かったのですが、逆にある程度、アプリの各種機能が整った段階で浸透したので、日本のユーザーはより、BeRealを有効に活用していると思います。

実際、他の国に比べて日本のユーザーは日常的にアプリを使う頻度が高い傾向にあります。私たちは、日本人は飾り気のない、盛らないつながりをより強く求めているのではないかと分析しています。

━━BeRealは、フランスが発祥です。これまで世界的なSNSプラットフォームは米国を中心に登場することが多かったと思います。フランスという国の文化がBeRealの誕生に寄与した面はあると思いますか。

確かにBeRealはフランス発のSNSですし、フランスはコンシューマー向けのアプリを開発する人たちにとって整った環境であると言えます。

しかし、「フランス発だから現在の成功があった」とは思っていません。すでに欧州以外でも世界的にユーザーを増やしていますし、私たちも多様性を持ったグローバル展開の企業体だからです。Voodooもフランス発の企業ではありますが、すでに多国籍企業になっています。世界の人々がSNSに期待を寄せるニーズを的確にとらえたことが成功の理由と考えます。

━━欧州、米国、日本以外で特にユーザー獲得に注力したい国や地域があれば教えてください。

SNSプラットフォームという特性上、特定の市場を戦略的に攻めるような考えはあまり持ってはいません。BeRealに価値を感じてくださる人たちがいる場所で、私たちのアプリは広がっていく。ですから常に、世界のどこでどのような人たちがBeRealに価値を感じてくれているのか、注意深く観察して、次なる戦略を考えています。

またVoodooの買収により、Voodooの知見も活かして、新たなアプリ機能の開発も行っていく予定で、その機能がもたらす新たなエクスペリエンスが、また新たなユーザーの獲得に資するものと思います。

━━2024年2月から著名人や企業ブランドの公式アカウント機が開始され、DIORやM・A・C、ADIDASなどのブランドも活用を始めています。「BeReal」がブランドマーケターに提供しうる価値をどう捉えていますか。

私たちはブランドに対してもユーザーに対してと同様の価値を提供したいと考えています。その価値とは、フィルターのない素の状態で人と人をつなげる、本質的なコミュニケーションを提供するというもの。ブランドに対しても、本質的で直接的にユーザーとつながる機会を提供しています。

加えてBeRealがブランドの活用に際して提供できる価値として、ユーザーの能動的な姿勢も上げられます。他のSNSを見ている時のように、なんとなく画面をスクロールしているわけではなく、自ら投稿してコンテンツを共有し、対話をする、そのすべてを行っているわけです。

世界のユーザーの半数は週に6日、「BeReal」のアプリを開いていることもわかっており、非常にアクティブである点も特徴のひとつです。こうした特徴もブランドとユーザーの新たな接点づくりに貢献するものと考えています。

━━BeRealは現時点では、企業向けの有償の広告メニューの提供はしていません。企業による、マーケティングツールとしてのBeRealの活用が進むなかで今後、広告事業の展開は考えているのでしょうか。

はい、広告メニューの展開は考えています。7月開始を念頭に「BeReal」内に広告を出せるアドネットワークの公開準備を進めているところです。すでに、関係のある広告会社や広告主企業に話をしていますが、良い反応を得ています。

もちろん、広告はユーザーエクスペリエンスに最適な形で組み込み、価値を作り出していくつもりです。このアプリのDNAを守ることが重要です。

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