コーヒーとサブスクで客層若返り 新業態の「町の電器店」、ファミリー電気商会大津店

コンテンツでリピーターを増やし、上得意客に育てていく中長期戦略

量販店やECサイトの台頭で姿を消しつつある町の電器店。得意客へのアプローチを重視した地域密着型の経営で生き残りを図ってきたが、顧客の高齢化が課題となっており、若年層の獲得に苦戦している。「パナソニックショップ」を支援するパナソニックは対策として、カフェスペースの設置や理美容家電のサブスクサービスなどを取り入れた新業態店「KURA_THINK(クラシンク)」への転換を促す。2020年に「クラシンク」1号店となった「ファミリー電気商会 大津店」(神奈川県横須賀市)に取材した。

コーヒーと洋菓子を販売するカフェスペースを設置しているクラシンク

入店後、まず目に入るのは家電ではなく、様々なお菓子とコーヒー豆が並ぶカフェスペースだ。一見するとカフェテリアにも見えるが、店の奥ではオーブンレンジや自動調理鍋などの調理家電がそろったキッチンが設置されているほか、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの家電も展示されている。店内の一角には様々な理美容家電がそろったドレッサーもある。

月の来店客数は把握しているだけでも250~300人で、うち1割が新規客だという。大津店以外のファミリー電気商会では毎月50~60人程度のため、クラシンクの施策が奏功しているとみている。クラシンクとしてオープンする前は、顧客の高齢化が課題だったが、現在は若年層のカップルが来店するなど、店の雰囲気も大幅に変わったという。

ファミリー電気商会 大津店の内観。奥には料理体験を実施するキッチンが設置されている

カフェスペースでは、ブラジルやインドネシアなど様々な国の豆を用意しており、焙煎体験も可能。パナソニック製のコーヒーメーカーで淹れるため、販促も兼ねている。お菓子は地域の洋菓子店から取り寄せたドーナツで、同店限定商品も販売。イベント時の販売を除いても、月に4~500個は売れるという。

同店のコーヒーはブレンドではなく、豆ごとのシングルで提供している点もポイント。好みの豆を探す楽しみ方もあり、コーヒーやお菓子のために同店に通う顧客もいるなど、リピーターの獲得につながっている。コーヒーを飲みに来てもらう事で、家電を扱っていることを知ってもらう戦略だ。

店内のキッチンスペースでは調理家電を使った時短メニューを学ぶイベント「まとめづくり料理体験」を有料で実施している。パナソニックショップでは調理家電の訴求のためにスタッフが調理を実践する「料理教室」を開催する店が多いが、クラシンクの料理体験は調理家電を購入した顧客に調理方法を教え、顧客に実際に作ってもらうという内容だ。購入家電の機能や付加価値をより詳しく知ってもらう狙いがある。

美容家電のサブスクサービスでは、定額料金でスチーマーやRF美顔器などを1日1回60分のセルフサービスで利用可能。備え付けの基礎化粧品も使用できる。子どもの世話が忙しく、自宅ではゆっくり美容を楽しむことができない子育て世代などに人気。オープン当時から継続して利用している人も存在する。来店理由を作ることでリピート率を高め、ほかの提案や依頼につなげる考えだ。

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