日本はリテールメディアで他国以上に急成長を遂げる可能性がある Criteoジマーマン氏に聞く

グローバルでコマースメディア事業を展開するCriteo(クリテオ)は、市場拡大が見込まれるリテールメディア領域を強化している。海外ではすでに8年ほどの蓄積があるが、日本市場の本格展開は2021年から。ドラッグストア最大手のウエルシア薬局など、小売業者との提携も進んでいる。

2024年1月にグローバルリテールメディア部門のゼネラルマネージャーにメラニー・ジマーマン氏が就任。このほど来日し、日本の広告主や小売業者向けのセミナーで講演した。米国の老舗百貨店メイシーズで、リテールメディアネットワークの構築に携わるなど小売の視点も熟知するジマーマン氏に、市場動向や日本への期待について聞いた。

小売、広告主の双方にとって“Win-Win”なメディア

――リテールメディア市場が世界中で注目されている理由や背景とは。

リテールメディア市場は現在、SNS広告の成長率をしのぐ勢いで急成長しています。これほどの勢いがある理由は、小売業側とメーカー(ブランド)側の両者の重要な問題を解決しているからだと考えています。

まず小売業者にとっては、自社のECサイトなどに他社メーカーやブランドの広告を掲載することで、新たな収益源としての広告収入を手にすることができます。本業の小売業と比べて利益率が非常に高い、非常に魅力的な新規事業といえます。

写真 人物 メラニー・ジマーマン氏

メラニー・ジマーマン氏

また、広告主であるメーカー側にとっては、広告効果の高いメディアに出稿することで、新規顧客の獲得や高い販促効果を得られます。まさに、小売業側と広告主(メーカー)側のWin-Winの成果が得られる素晴らしいメディアなのです。

――従来のデジタル広告配信とは異なる点は?

もちろん、これまでも小売業者のECサイトは特定の商品やブランドの宣伝の受け皿となってきました。しかし、かつてのそれはマスマーケティング的なアプローチで、すべてのサイト訪問者に単一のメッセージが発信されるものでした。

リテールメディアの登場により、小売業者が保有する顧客の会員情報や購買履歴情報を活用することで、パーソナライズした関連性の高い広告を配信できるようになりました。そのECサイトを閲覧しているのは、何か欲しい商品を探している購買意欲の高いユーザーですから、コンバージョンに至る効果もより高いわけです。

もうひとつ、従来のデジタル広告との大きな差別化要素といえるのが、「クローズド・ループ・メジャーメント」が可能になった点です。クローズド・ループ・メジャーメントとは、オンライン・オフラインの垣根を越えて、顧客が広告を見てから購入に至るまでの動きを測定することを指します。従来の広告では、オンラインで広告を見た人が実店舗で購入に至ったかどうかを把握するのは難しかったのですが、その動きが見えるようになりました。広告効果を正確に把握したいメーカーにとっても、リテールメディアはとても有効なメディアであるといえます。

効果測定可能なリテールメディアに予算シフトの可能性も

――リテールメディア先進国である米国の、現在のトレンドを教えてください。

メーカー側で、予算や組織のあり方を再考すべきとの議論が出てきています。

小売業と商談する立場である営業部門では、小売店での自社商品の取り扱いや売上を高めるための販促費を管理しています。その予算は、店舗内のサイネージや、ある特定の小売業者のECサイトへの出稿などに使われます。リテールメディアへの投資は、販促費の延長線上として扱われることが多いです。

一方で、ブランドの好意度・認知度を高めるための広告宣伝費は、宣伝部門の管轄です。広告宣伝費の対象はマス広告やオフサイト広告(*1)に集中しており、特定の小売店と手を組むことはほとんどありません。

この別個の扱いだった2つの予算は将来的に、より効果的で測定可能なリテールメディアへと収束していくかもしれません。また、リテールメディアは小売業者のファーストパーティーデータを活用します。昨今のサードパーティークッキー廃止の影響を受けずに効果的な広告を配信できる点でも、その傾向が加速すると推測しています。

関連性の高いユーザーに広告を表示

――Criteoのプラットフォームやサービスの優位性は。

真に効果のある広告とは、適切な消費者に、適切なタイミングで、適切なメッセージを発信することです。私が米国でリテールメディアネットワークの構築に携わった数年間で、広告プラットフォームによって成果に大きな違いがあるということを学びました。

例えばスポンサード広告は、顧客がECサイトで商品を検索・閲覧したとき、検索結果ページや商品詳細ページにネイティブ広告として表示されます。つまり、スポンサード広告は最も多くの広告料を支払っている広告が表示されるのではなく、それを見るに最もふさわしい消費者が目にするように表示されることが重要です。それを可能にするのはアルゴリズムです。私たちは、最も関連性が高く、ユーザーにクリックされる可能性が高く、コンバージョンにつながる可能性が高い広告を予測できるエンジンやアルゴリズムを構築しています。

イメージ Criteoリテールメディア

オンサイトとオフサイトの両方をカバー。ユーザーごとにより関連性が高く、効果的な広告を表示する

もう一つは、運用の効率化です。広告プラットフォームの中には、バックエンドのオペレーションのため追加のツールが必要になることもあれば、広告掲載の運用が非常に面倒な場合もあります。

Criteoは、小売企業が効率的にリテールメディア運営を行える洗練された高度なバックエンドツールを用意しています。また、世界220社以上の小売企業のリテールメディア運営を支えてきた経験による、豊富な知見やノウハウも共有することができます。

日本市場は急成長を遂げる可能性がある

――リテールメディアをめぐる日本の市場をどのように見ていますか。

2024年2月にはウエルシア薬局とのパートナーシップがスタートしました。日本市場に関しては緒に就いたばかりであり、今後さらに多くのパートナーシップが展開されていくことに期待を寄せています。

リテールメディアは特定の国や特定の小売業者が先行してはいますが、他の事例を学べるという後発ならではのメリットもあります。その意味で、日本は他に類を見ない急速な成長を遂げる可能性を秘めています。

しかし、国ごとの違いも配慮すべきだと思っています。店舗の役割やデジタルメディアの特性など、日本ならでは市場環境もあります。日本の消費者の心に響く独自の戦略を見つけることが非常に重要です。

私たちは様々な地域、様々な業種にまたがったリテールメディアで豊富な経験を積んできました。日本の小売業および広告主の皆様に対しても最大の効果をもたらし、目標達成を支援するためのパートナーとして貢献したいと考えています。

写真 人物 ジマーマン氏

Criteoは5月に広告主や小売関係者を招いて都内でセミナーを開催。ジマーマン氏も登壇して米国の事例などを紹介した

また大手小売業の中には、社内にリテールメディアの新部署やリテールメディアのエージェンシーを立ち上げる企業も出てきました。小売業者は今後パブリッシャーとしての役割も担っていくことになりますが、とはいえ本業は「小売」であることに変わりはありません。

パーソナライズされた広告展開により、単に広告収入が得られるだけでなく、実店舗への集客をも促進する。リテールメディアは、本業とメディア事業との架け橋となる存在であると考えています。

私たちがさらなるイノベーションを提供することで、本業とリテールメディア事業のさらなる強力な結びつきを生み出し、ECや店舗での成長をも促進する原動力になっていきたいです。

*1)オフサイト広告:小売業者のWebサイト(ECサイトなどのオウンドメディア)から離脱したユーザーなどが閲覧中のオープンウェブ上に表示される広告のこと。一方でECサイトなどのオウンドメディア上に表示される広告を「オンサイト広告」という。Criteoではオンサイト・オフサイト双方に広告を配信できる。

更に詳しいリテールメディアの情報を知りたい方は以下の調査レポートをご覧下さい。
https://www.advertimes.com/white-paper/contents/464456/

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お問い合わせ

CRITEO株式会社

住所:東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー26F
お問い合わせ窓口:https://www.criteo.com/jp/talk-to-an-expert/

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