「豆腐で世界征服」の第一歩 開拓に必要な常識を打ち破る力とは

海外進出で見えた強みと改良点

発売から約1カ月が経過し、現地の反応が見えてきました。現状、店舗の配荷スピードは速く、小売店の「豆腐バー」への期待値の高さがうかがえている状況です。一方、回転率はKPIを若干下回りました。シンガポールでは濃い味付けやスパイシーなものが好まれるため、昆布出汁の繊細な味付けは現地の消費者には物足りなかったかもしれません。

また、冷奴のように豆腐を加熱しないで食べる食文化もないため、店頭POPやSNSを活用して「豆腐バー」の食べ方もあわせて伝えていく必要があると感じました。しかし、1本300円近い価格でも商品を購入してもらえたことは、「豆腐バー」のポテンシャルの高さをうかがわせ、今後の海外拡張における試金石になったと考えています。

豆腐は中国を起源として、アジア圏や私が開発の発想を得たアメリカ、そしてヨーロッパでも食べられているワールドワイドな食品です。健康的で、特に欧米では植物性のたんぱく源として重宝されていますが、「豆腐バー」のような商品は未だありません。

「日本の伝統的な豆腐製造技術を活かした『豆腐バー』には勝機がある」「いつか海外に進出したい」と、開発当初から「豆腐での世界征服」を企んでいましたが、海外でも日本と同様に健康意識が高まっているこのタイミングで、ついに海外進出をスタートさせることができたのです。

今回のシンガポールでの反応を見て、効率的に植物性たんぱく質が摂取でき、いつでもどこでも片手で食べられる「豆腐バー」は、全世界をターゲットに勝負できる革新的な商材だと改めて自信を強めました。

実データ グラフィック 豆腐バー世界進出

今回のシンガポールを皮切りに、冷凍技術、日経POSセレクション売上1位、HALAL(豚やアルコールなどイスラムで禁じられるものが含まれていない)認証という武器を持って、世界へ進出していく。

シンガポールに進出して、ますます世界進出への野望が膨らんでいます。しかし、今回の試みから、まだまだ足りないなと感じるのは、現地の嗜好性や食シーンに沿ったスペックとコミュニケーション開発の強化です。これを徹底することで海外でも必ず高い評価が得られるのではないかと期待を寄せているところです。

「豆腐で世界征服」一歩目の気づき

<海外でのチャンス・強み>
(1)海外でも健康志向が高まり、植物性たんぱく質のニーズが増加
(2)老舗豆腐屋が培った製造技術を活かした商品開発秘話、Brand Story
(3)日本No.1実績の話題性と信頼感
(4)日本品質の安心感とそれを保つ最新技術

 

<海外展開での改良点>
(1)現地の嗜好性に沿ったフレーバーの開発
(2)TOFUの新しい食べ方提案

このように、「豆腐バー」は“柔らかい”と認識されていた豆腐を“堅く”し、“日持ちしない”と思われていた課題を乗り越え、保存性を“長く”しました。常に豆腐の常識を打ち破りながら新たな需要と販路を開拓してきているのが「豆腐バー」です。

さて、次回のお話をする前に……読者の皆さんは「キシリクリスタル ミルクミントのど飴」や「メープルマニア」といった商品をご存じでしょうか?実はこの2つ、私のアイデアが活かされた商品なんです!第6回目のコラムでは、これら実例を踏まえて、商品開発における「常識破りの発想法」についてお話させていただきます(つづく)。

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池田未央(アサヒコ 代表取締役)
池田未央(アサヒコ 代表取締役)

2018年にアサヒコ入社、2023年5月より現職。国内外の菓子・食品メーカーにて商品開発とマーケティングに25年以上従事。ブランドマネージャー、プロダクトマネージャーの経験から、商品を生み出す川上から消費者の手に渡る川下までを一気通貫してリードできる知識と経験を有す。また、各業界で新しい視点でヒット商品を手掛ける。

池田未央(アサヒコ 代表取締役)

2018年にアサヒコ入社、2023年5月より現職。国内外の菓子・食品メーカーにて商品開発とマーケティングに25年以上従事。ブランドマネージャー、プロダクトマネージャーの経験から、商品を生み出す川上から消費者の手に渡る川下までを一気通貫してリードできる知識と経験を有す。また、各業界で新しい視点でヒット商品を手掛ける。

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