隆一:コピーライターは自分の技術を磨くための相手としてAIを活用する一方で、今後、AIに入れるプロンプトを書く人としても重要になってくるのではないかと思っています。最近、プロンプトデザイナーと名乗る人が出てきていますが、将来的には、コピーライターだった人、あるいはコピーをよく理解している人がプロンプトデザイナーになる可能性もあるかもしれない。
英嗣:プロンプトデザイナーになる。つまりは問いかける力を持つということ?
隆一:この広告で伝えたいのはこういうことで、どういうコピーを出してもらいたいかを伝えることはもちろん大事なのですが、実はその軸にある企業の想いや本質みたいなことをいかに言語化できるか。そして、それをどれだけきちんとAIに伝えていけるかが重要になってくると、僕は思っているんです。問いかける能力も含めて、そこにコピーライターの力が絶対に必要だし、そこにこそ発揮されていくのではないかと。
英嗣:想いを伝えるという意味では、オリエンシートをつくることに近いのかもしれないですね。
隆一:今年2月に日本コカ・コーラの「LIVING MART Coca-Cola ZERO」というイベントをお手伝いしました。このイベントは「生きているコンビニ」がテーマで、冷蔵庫を開けると、商品それぞれに個性があり、語りかけてくる。そしてQRコードをスキャンして発行されるレシートに、自分が選んだコカ・コーラ ゼロのプロフィールが印字されるという企画です。それぞれのコカ・コーラ ゼロの個性を出すために、プロフィールは生成AIで作成しました。出身・職業・趣味・特技など細かく設定して、冒険家など夢のある職業を選び、結果として1万通りのプロフィールができあがりました。なおかつプロフィールに一貫性を持たせてほしいなど、とにかく細かく細かくプロンプトをAIに入力していきました。このときは4000字くらいの文章を書きましたね。
こういう仕事をいくつか経験するうちに、コピーを書くより、実はプロンプトを書く方が大変じゃないかとさえ思うようになりました。
英嗣:コピーライターとデジタルがわかる人が協業していく時代ですよね。互いに理解をしないと難しいかもしれないですね。
隆一:クリエイティブの本質までを理解できるエンジニアはまだ少ないし、CDなどクリエイティブ側もAIの精度を上げるよりも、出目の美しさを求めたりすることも多くみられます。お互いに理解しきれていない剥離みたいなことは時々起こっているかもしれません。