不動産会社として「いきものの住み心地」も考える、生物多様性に向けた東急不動産のプロジェクト

「都心のビルを野鳥の止まり木にする」という構想

東急不動産は、今年3月に「いきもの東急不動産プロジェクト」をスタート。3月14日に読売新聞にこんな新聞広告を出稿した。

実データ グラフィック 「いきもの東急不動産プロジェクト」新聞広告

「入居者募集」を告知する広告だが、よく見ると、その入居条件は「鳥類のみ」。大きなグリーンの中にポツンと小さくある間取りは、実は鳥のための住居、巣箱の間取りだ。これは、東急不動産が不動産業と生物多様性保全の知見を活かした住まいづくりに挑戦するプロジェクト「いきもの東急不動産」の第一弾として実施された。本プロジェクトでは、「いきものの住み心地を考える不動産会社へ。」をコンセプトに、東急プラザ表参道原宿6階の屋上庭園「おもはらの森」で推進してきた生物多様性保全の知見を活かし、「鳥類のことを考えた住まいづくり」を開始。公式Webサイトをオープンし、2月27日には同社の知見を活かした巣箱を設置した。

「当社は“都市と自然をつなぐ。ひとと未来をつなぐ。”を環境ビジョンに掲げて、都市緑化を進め、周辺の緑をつなぎ、そこに住むいきものたちの中継拠点を担うことで、エコロジカル・ネットワーク形成に取り組んでいます。その一つとして、東急プラザ表参道『オモカド』開業から12年間、屋上に巣箱を設置し、シジュウカラの営巣を図る取り組みを続けてきました。この取り組みを通して、多くの方にとって自然との共生を意識する機会になっていますと幸いです」と、同社担当者は話す。

同社は、2012年から『都心のビルを野鳥の止まり木にする』という構想のもと、東急プラザ表参道の設計段階から、いきものにとっての暮らしを考えた生態系づくりに取り組んできた。おもはらの森ではオープン以降、鳥類22種、昆虫類158種の来訪が計測されている。そこで、クリエイティブスタッフはまず、この12年間で東急不動産が取り組んできた、シジュウカラ誘致をはじめとする取り組みの軌跡をヒアリングすることから始めた。

「野鳥の研究者や専門家を交えて最適な巣箱のあり方を検証したり、シジュウカラのニーズに合わせた植栽選びや、水場(バードバス)の設置に取り組むなど、いきものの最高の住まいづくりに挑む試行錯誤の歴史を伺いました。そんな東急不動産のいきものへの本気の思いを知り、新しく何か企画を打ち出す、というよりは、これまで取り組んできたことを、なぜ取り組んでいるのか?Whyの部分を明確にすることで、プロジェクトにきちんと輪郭ができることのほうが大切だと考えました」(コピーライター 姉川伊織氏)

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