リテールメディア活用術 認知にも購買にも効く顧客起点プランニング

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングで「Dove(ダヴ)」ブランドを担当していた大熊佑翠氏と、リテールメディアのソリューションを提供するフェズの根津スティーブン遥氏が「宣伝会議サミット2024(夏)東京」に登壇。「Dove」のケースをもとに、リテールメディアで購買データを活用したブランドマーケティングの重要性について語った。

消費者・ショッパーをファクトデータで理解する

コロナ禍を経て、消費者のライフスタイルやインサイト、購買行動が大きく変化している。既存のブランド戦略の効果が希薄化・形骸化し、メディア効率の悪化につながっているケースも少なくない。

写真 人物 ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング アシスタント ブランドマネジャーの大熊佑翠氏(右)と、フェズ リテールメディア事業本部 ビジネス開発部長の根津スティーブン遥氏(左)

ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング アシスタント ブランドマネジャーの大熊佑翠氏(右)と、フェズ リテールメディア事業本部 ビジネス開発部長の根津スティーブン遥氏(左)

フェズは国内最大級のリテールデータプラットフォーム「Urumo(ウルモ)」を基盤に、リテールメディア事業を展開している。根津氏は、「ファクトデータによる『正しい消費者・ショッパーの理解』に基づき、顧客起点で広告・販促・店頭をプランニングすることの重要性が高まっています。近年国内外で注目度が高まっているリテールメディアも、ファクトデータを活用したメディアの一種です」と解説する。

イメージ スライド リテールメディアとは何か

リテールメディアをめぐっては、店舗に設置するPOPやサイネージ、小売アプリなど小売企業が保有するメディアをイメージしやすいが、フェズでは生活者(ショッパー)の「認知から購入」までのすべての段階をカバーしていくことを提唱している。上図の「広義のリテールメディア」がそれだ。複数の小売企業のデータを横断化して活用することで、プロモーション領域においても評価改善を繰り返し、効果をより高めることができる。

購買効果の可視化によって改善PDCAが実現

フェズが提供するリテールメディアソリューション「Urumo Ads(ウルモ アズ)」で実現できることの1つ目が「ターゲティング精度の向上」だ。フェズでは全国13小売・1000万IDの購買データを保有。それらを国内の主要広告メディアデータと突合することで、高いターゲティング・効果検証の精度を実現している。

イメージ スライド 全国13小売りのデータを国内主要広告メディアで活用

「リテールメディアでは推定型のデータが多い中、Urumo Adsでは、アプリから取得する広告IDによりユーザーを特定する断定型のデータを活用しており高精度であることが特徴です。ユーザーから第三者提供許諾を取得した適法なデータを活用している点もユニークポイントです」(根津氏)

Urumo Adsで行うターゲティングは、「〇〇購入者、〇〇非購入者」などピンポイントに狙ったユーザーに対して配信する「購買ターゲティング」と、購買データを活用した「類似オーディエンス」「セグメントファインダー」を活用した配信が可能だ。このうち、「セグメントファインダー」はフェズの特許技術だ。

「セグメントファインダー」は、Google・SmartNewsの媒体ターゲティングデータとUrumoが保有する購買データを突合することで、広告配信前に購買親和性の高いセグメント(例:犬好き、ポップス好き、ゲーム好きなど)を特定することが可能だ。一般的な購買データを活用した広告配信ではリーチの規模が出ないというデメリットもあるが、この手法をとることでリーチの質と量の両方を担保できる。

Urumo Adsで実現できることの2つ目が、「購買効果の可視化による改善PDCAの実現」だ。キャンペーンの成果について、広告の接触者と非接触者が施策期間とその前の比較期間でどう推移したか、購買数・購買率の実数とともにレポートで提供している。

施策で得られるデータが今後の意思決定に役立つ

Doveブランドは泡洗顔料のプロモーションで、Urumo Adsを採用した。大熊氏は今回のマーケティング戦略について、まずは「投資先をマス広告メインにすべきか」から検討したという。

Doveのようなブランドでは、従来テレビCMなどによって「広く」認知を獲得し、店頭で想起率を上げる施策を打っていくのが王道の戦い方とされてきた。

しかし、スキンケアカテゴリーにおける市場の動きに目を向けると、マス広告を実施していない(であろうと思われる)複数のブランドがシェアを拡大。一方で出稿量は多いものの、シェアを伸ばせていないブランドもあった。

スキンケアカテゴリーに対する消費者のリテラシーが高まり情報源も多様化する中、リーチを優先とする広告手法がどれだけ購買行動に寄与しているのかという疑問が背景にあった。

「検証時は、スモールスタートで始めたいという思いと、一定のサンプル数での検証のもとで納得感のある結果がほしいという、ある意味相反するニーズがあります。リテールメディアを活用することで、メインチャネルであるドラッグストアなどのデータを活用して量と質を担保しつつ、コストを抑えながら納得感ある結果が得られると考えました」(大熊氏)

検証に耐えうるデータの量と質があり、また1つのSKUだけではなくDoveの泡洗顔料シリーズの全体として売上の反映まで把握できる設計の柔軟性があることなどからUrumo Adsを採用。購買親和性の高い媒体セグメントを事前分析して配信することで量と質を両立する「リーチの最適化」の施策を実施した。結果、広告指標では視聴数が目標比124.2%、購買リフトは前期間比25.1%増、購買率も42.8%増という成果が出た。

「広告を見たことで購入率が上がったことが見えたのと、セグメントの切り方で購買率も大きく変わったことが明らかになりました。それらの結果を踏まえ、マス広告を使った認知拡大のあり方や『どういうメッセージを届けるべきか』の解像度を上げていくことができそうです。

メーカーは直接的な売上のデータを保有しておらず、複数のキャンペーンを同時に走らせることが多いため、1つひとつの施策がどのように売上に寄与しているかが見えにくい。そのため、机上の空論を繰り返して時間を費やしてしまうこともあります。このような状況に対して、オフラインを主戦場とするメーカーであっても、データドリブンな意思決定やPDCAサイクルの構築に役立つのがリテールメディアの強みであると感じました」(大熊氏)

お問い合わせ

株式会社フェズ

「Urumo Ads」お問合せフォーム
https://www.fez-inc.jp/contact_urumo_ads

advertimes_endmark
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ