これまでのコラムでは、豆腐の常識を覆して大ヒットをした「豆腐バー」についてお話をしてきました。今回は、私が新商品を企画する時に意識していることや実際の開発プロセスについてお伝えします。
前回のコラム
「融通無碍(ゆうずうむげ)」。あまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、仏教に由来して、思考や行動が一つに凝り固まることなく自由でのびのびしていることを意味します。
私が商品開発の際に意識している軸が、この「融通無碍」です。既成概念にとらわれることなく、自由で柔軟な発想から新たな需要を創造する。「豆腐バー」はまさに融通無碍の発想から生まれた商品だと思っています。
常識外れの甘いのど飴はなぜ生まれたのか
私が初めて商品を開発したのは約30年前です。キャンディメーカーに入社し、春夏の新商品企画を任されたことが最初でした。デビュー作は「マスカットのど飴」、その名の通りマスカット味ののど飴です。今でこそ大きな違和感はありませんが、当時は全く受け入れられませんでした。
なぜならばその当時、「のど飴」の新商品が発売されるのは、風邪が流行る「秋冬」。差別ポイントは「機能」であり、ハーブの種類や配合量で各社が競い合っていたのです。「春夏」に「美味しさ」を訴求するのど飴は、いわば常識外れ。私の企画はボツになりかけました。上司が初仕事だからと何とか発売の許可を取り付けてくれましたが、発売決定後も先輩の営業社員からは「こんな的外れな商品は売れない、自分で売ってこい」と突き返されるほど非常識な企画だったのです。