しかし、夏でもエアコンでのどは乾燥しますし、ハーブがたっぷり入ったのど飴は私にとっては苦く、舐めているのがいつも苦痛でした。この不満を解消すべく企画した「マスカットのど飴」は店頭に並ぶと、周囲の予想に反して売れたのです。
この成功体験をもとに、大人が味を楽しみながら舐められるのど飴のラインアップを増やし、後に「キシリクリスタル ミントのど飴」も誕生しました。同製品は2003年のハードキャンディ市場で売上1位(インテージSRI調べ ハードキャンディ市場 2003年6月~2014年2月 累計販売金額ベース)を記録し、同年の日本食糧新聞社ヒット大賞を受賞しました。
「のど飴は風邪をひいた人が苦くても我慢して舐めるものだ」と決めつけていたのはメーカーであり、お客さまは「季節を問わず美味しくのどを潤したい」と願っていたのです。今では年間を通じて売場に味を楽しむのど飴が並び、のどケアだけでなく気分転換や口臭予防にも利用が広がっています。
「秋冬に機能性で差別化を図る」というのど飴の常識にとらわれず、「年中美味しさを楽しめる」商品を生み出して大ヒット。
目に見えない価値を商品に落とし込むために
土産菓子の会社に所属していた頃は、東京土産カテゴリを担当しました。その時に主流だったのは、地域の名産品を使用したり、地名を冠したりするお土産。東京なら「雷おこし」「草加煎餅」「東京〇〇」といった具合です。
もちろんどれも美味しく素敵なお土産ですが、国際的な観光名所として注目されていた東京のお土産として、よりその魅力を体現するような洗練された「新しいお土産」をつくりだしたいと考えていました。そこで思いついたのが、東京という都市が持つ「空気感」や、東京以外では手に入らない「希少性」もお土産を構成する重要な要素に成り得るのでは、ということ。
「メープルマニア」はメープル菓子の専門ブランドで、本格的な味わいと高いデザイン性から東京駅No.1(※東京駅限定手土産スイーツ売上ランキング・グランスタ杯スイーツ土産部門1位)の手土産に選ばれました。「その土地自体が持つ雰囲気」という無形の価値をカタチにし、新しいお土産の定義を確立することにつながりました。
「名産品を使って地名を入れた商品名」のお土産が多かったが、その土地の空気感をお菓子に落とし込み、メープル菓子専門店ブランド「メープルマニア」を生み出した。