カンヌライオンズ2024、ユーモア、ヒューマニティ、そして地域文化の理解と尊重へ(前編)

3 HONESTY 「正直」

Unilever「The Dove Code」(SOKO)

AIは我々の労力を軽減してくれる一方、これまでの努力を水の泡にしてしまう可能性もある。Doveがこれまで20年にわたり取り組んでいた「Real Beauty」キャンペーンにとって、今度の脅威はAIだ。DoveはちまたのAIが提示する片寄った美の定義を否定し、Doveが20年来示してきた本来の美を検索・提示できるようAI検索のアルゴリズムをハックするコードを提供することとした。それが「The Dove Code」だ。

写真 グラフィック Unilever「The Dove Code」(SOKO)

2025年には、オンラインコンテンツの 90%をAIが生成すると予測されている。AI が生成する画像に見られる現在の傾向は、均質化された美の基準であり、多様な美を賞賛するDoveの主張を阻害するものとなる。例えば「美しい女性」を検索すればその37%は金髪で、53%が日焼けした白い肌となる。このような傾向は、より包括的な美を受け入れるための進歩を蝕む恐れがあるのだ。
Doveが調査した「グローバル・ステート・ビューティー・リサーチ」では、ソーシャルメディア上の「人工的な美」のせいで女性の3人に1人が外見を変えざるを得ないと感じているなど、AIが容姿の自信に与える影響を明らかにしている。そこでDoveは独自のコードを追加することで、単純な検索結果ではなく、Doveの訴える多様な美を提示できる方法を生み出したのだ。

通常、AI 画像ツールで「ゴージャスな女性」や「自信に満ちた女性」を検索すると、ステレオタイプの美しさの画像が返されるのだが、検索クエリに「ダヴの本物の美しさのキャンペーンによると」を追加することで、まったく異なる結果が提示されるようになる。これによりさまざまな人種、民族、体型、髪質の多様な女性が現れ、AI を通じてもDoveが提唱する本物の美しさが示されるのだ。Doveのコードを他AI にも組み込むことで、「Dove Code」は現在のデジタル上の美の基準を批判するだけでなく、包括性を高める強力なソリューションを提供している。

昨年も同様の傾向はあったが、地域固有の問題に切り込み、その解決を図る施策も高い評価を集めた。今年はさらに活動のその先の成果をより高く目指したものも多く、「Change Policy(=政策、法律の変更)」に挑む案件が各所で見られた。その一つがUN Womanがリードした「Child Wedding Cards」だ。

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