カンヌライオンズ2024、ユーモア、ヒューマニティ、そして地域文化の理解と尊重へ(後編)

8 REBORN 「新生」

Heineken「Pub Museum」(LePub、Publicis Dublin)

世の中は革新に溢れ、古きものは淘汰されつつある。進化の過程ではそれも致し方ないのかも知れないが、それが地域固有の文化を支えるものだったらどうだろうか。アイルランドのパブはまさにその象徴だろう。しかし今、運営費や税金の高騰、インフレなどによりアイルランドのパブの 4 分の 1 が閉店しており、また年間では150軒にも及ぶという。さらには歴史的遺産とも言える世界最古のパブと呼ばれる老舗群にもそのリスクが押し寄せているのだ。

イメージ グラフィック Heineken「Pub Museum」(LePub、Publicis Dublin)

ビール会社であるハイネケンのブランドミッションは、人々がより豊かな社交生活を楽しめるようにすること。これを背景にアイルランドのパブを救済する手立てを講じた。それがパブの博物館化だ。アイルランド文化遺産評議会は、博物館など一般公開されている歴史的に重要な場所に対して、保護ステータス、税制支援、その他の財政的恩恵を提供している。そこでハイネケンは、歴史あるアイルランドのパブを仮想博物館に仕立て上げ、それらの恩恵を被れるよう画策した。実際にはパブの各所にARなどでその歴史的情報などを見られるようにするなどのギミックを用い、博物館としての機能を付加していったのだ。まさにパブがこれまでの立ち位置を変え博物館に生まれ変わる、すなわち「新生」するということ。またそのやり方をチュートリアルにまとめ、その他のパブも活用できるように提供しているほか、アイルランド文科省にユネスコ登録も働きかけているという。
キャンペーンのメッセージは「未来を守るために過去を訪ねよう」。

我々の書籍にある「New Things Can Come from History.」(歴史から新たなものが生まれる。)とも通じ合うところがありそうだ。

最後に私がいつも気にしてみている「仲間づくり」という視点の事例をご紹介したい。誰と組むことで大きな化学反応が起きるのか、はたまたそもそも「誰が仲間なのか?」「仲間として大切にしなくてはならないのは誰なのか?」といった視点で巧妙な仲間づくりがなされている事例を2つ。


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