カンヌライオンズ2024、ユーモア、ヒューマニティ、そして地域文化の理解と尊重へ(後編)

終わりに

一時のソーシャルグッドブームから現在では当たり前に世の中の課題解決に踏み出す企業が増え、またその課題解決も啓発段階から実行段階、さらに言えば議会を動かす、法律を変えるというレベルにまで昇華してきている。一方で至る所でクリエイティビティの力を讃える発言があり、またそれはこれまでの技巧的なものではなく、あらゆるレイヤーのアイデアをどこに向けて発揮するかという視点で議論され、その可能性についてさらなる期待が高まっているとも感じた。カンヌライオンズ=広告エージェンシーの祭典だったところに企業もメディアも学生さえ参加し始めている。そんな多彩な顔ぶれを見ると、確かにここには世界を、社会を変えようという気概が強く感じられる。

アクセンチュアソング デヴィッド・ドロガのセッション
「With Great Opportunity Comes Greater Responsibility」

ブランドがパーパスを生み出すのではなく、ブランドのコアにパーパスが存在するのが正しい姿とドロガ氏。また「Doing good is good business.」とし、善きことをするのがそもそもビジネスだと説いた。

写真 アクセンチュアソング デヴィッド・ドロガのセッション

世界最大のPR会社エデルマンのリチャード・エデルマン氏のセッション
「When Societal Progress Meets Resistance」

8割の人々がブランドは政治的動機で行動していると答え、企業の政治的スタンスは生活者の購買基準に大きく影響するためマーケターは政治を無視してはならないと、エデルマン氏は語った。実際に自身もブランドの政治的スタンスを背景に物を買うし、調査では6割の人々がそうだと答えている。またブランドは毅然とした態度やフェアトゥペイ、人種や多様性などについての発信をさらに期待されているなど同社の調査結果を紹介。

写真 世界最大のPR会社エデルマンのリチャード・エデルマン氏のセッション

そんなパーパス・クリエイティビティが定着する一方、企業としてのマーケティングコミュニケーションとしてコマーシャル・クリエイティビティの質も格段に上がっている。ソーシャルメディアを含めて多様なメディアが存在する中で、それらをいかに有機的に組み合わせ、さらには情報認知で終わらせず、そこにインタラクティブな姿勢で人々の参加を促していくのか。感情に訴え、人を実際に動かす投げかけからの巻き込み方にも緻密な設計が活きている施策が目立った。

人の感情をしっかり捉えて、そこにアジャストした声掛けで人を動かす、言わばアカウントプランニング的な発想が、いままさに現場で浸透し、実行されているのを感じる。人の生活をしっかり見つめていれば、そこには必ず悩みがあり、彼らが大事にする日常の瞬間が見つかるはずで、そこに対してブランドが何をできるかを考え合わせればアプローチの方法はあるはずだとP&Gのマーク・プリチャード氏は語った。相手を一人一人しっかりと見つめることが先のキーワードでもある「ヒューマニティ」重視ということにも繋がるのかも知れない。

P&Gマーク・プリチャード氏のセッション
「Finding Creativity in the Everyday」

グローバル展開する商品でも、それぞれのエリアでアプローチの仕方が異なる例を提示。そのシチュエーションに対してどう自分たちが提供できるベネフィットをいかにアジャストできるかがマーケティングのツボということか。

写真 P&Gマーク・プリチャード氏のセッション

ユニリーバのセッション「YOU」

同じくパーパスを大事にするユニリーバの「YOU」と題したセッションでは「See a Whole Person not just a consumer」とし、ブランドとして相手をセールス対象としてではなく一人の人間として見ることが重要だと説いた。そこに彼ら自身でさえ気づいていないニーズを見つけることができるとのこと。また自分たちクリエイティブやマーケターも偏見を持たずにその人全体を見るため思い込みから自分自身を解放しなければならないとも。

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写真 ユニリーバのセッション「YOU」

 

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