「NEC像」を形成する、デザイン組織のあり方とは?

一貫したメッセージを伝えるCDO統括の4機能

組織改革の後、2023年4月、同社では初のCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)に勝沼潤氏が就任した。同氏は先述の経営企画部配下の3部署に加え、「ブランドエクイティマネジメント機能」を加えた4つのチームを、「ブランディング&メッセージ(BM)機能」として統括する【図1】。

【図1】NECの組織図(2024年7月現在)

グラフ その他 NECの組織図

コーポレートブランド戦略部の役割は、NECとしての戦略=姿勢を定めること。経営企画部と最も密接に連携し、ブランド戦略やブランドガバナンスを構築していく。

そしてコーポレートデザイン部はその戦略を伝えるための戦術をデザインとして組み上げ、全社に伝えていく。

「製造業として、プロセスやガイドラインを展開して個々がそれを軸に自分の仕事に落とし込むというカルチャーは元々根付いていました」と井手氏。コーポレートブランドに加え、5月に発表されたDX事業のサブブランド「BluStellar(ブルーステラ)」に関しても、ガイドラインとそれを実践するための仕組みを構築し、社内に展開する。

メディア対応の広報機能が出自であるコーポレートコミュニケーション部は、社内外向けの幅広い全社コミュニケーションを担う。社内エンゲージメントの強化のほか、イントラネット、コーポレートブログやSNSコミュニケーション、スポーツ・パラスポーツの支援、アナリストリレーションなど、各ブランドオーディエンスの接点において、同社の姿勢を伝える。

そして今新たに取り組んでいるのが、4つ目の「ブランドエクイティマネジメント機能」だ。3つの部門で行ってきたブランド価値を高める取組みが、実際に企業価値にどのように貢献しているかを可視化。最適なアプローチ方法を見出し、価値を最大化させていく。

「投資家の視点でも、非財務資本が重視されるようになっています。無形資産であるブランド価値の企業価値への貢献量を可視化する方法を探求しています。

事業をBtoBにフォーカスして以降、『NEC』への一般認知は、長期的には下降傾向にあると冨岡氏は話す。

「しかし現在私たちが重視しているのは、先述の通りパーパスや実際の取り組みについて、理解・共感してもらうこと。したがってマスに向けたアプローチというよりは、各オーディエンスに対してフェイストゥフェイスで伝えていくことが大切だと考えています」(冨岡氏)。

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