経営幹部とのプロジェクトで若手デザイナーの視座が上がる
デザイナーとして成果物をリリースしたその先に、全社のKGIにどのように寄与していくか。社員のスキルやマインドの面でも、現在の体制は大きな効果をもたらしているという。
「ともするとデザイナーは、どの部署にいても同じアウトプットはできてしまうと思います。しかし経営機能の一員となったことで、3年目、4年目の若手社員も経営幹部と共にプロジェクトに携わることが増えました。これにより社長の考え方や目指す方向性を、実体験として理解することができる。その時の若手成長度合いは目覚ましく、視座も自然と上がっていることを感じます」(井手氏)。
また、積極的な新卒採用も行う。専門領域や国籍も様々で、人材の多様化も進んでいる。美大・芸大以外の大学でデザイン経営を学んでいる学生など、いわゆる“デザインシンカー”も採用の対象だ。
「共感してもらうためのプロセスをどんなにロジカルに構築しても、それを美しく明快に表現しなければ、最終的に人を動かすことはできない。デザイナーとデザインシンカー、その両方の力が必要であることを実感しています」(井手氏)。
「グループ社員11万人に対して、目指す方向に導いていけているかというとまだ道半ば」と冨岡氏は話す。「全社員が納得して日々の業務に落とし込み動いてもらえるよう、仕組みをつくり、私たち自身のアウトプットも増やしていきたいと考えています」と、今後の展望を語った。
宣伝広告に関しては、各部署で予算を持ち実施している同社。一方で現在、コーポレートに関するマス向けの広告出稿は行わず、各種イベントや展示会、COP28など国際会議への参加といったPR活動が中心。デザイナーは、スピーチや会見の際のストーリーやグラフィックづくりにも関わる。