「セルフブランディング」の大事さを広報部からプレゼン
そんな栗山選手と狭山山不動寺に移動する際、すれ違った中村選手が「栗、頭ブルーやないやん」と言って、自らが被っていたライオンズのキャップを手渡しました。「おう、サンキュー!」と言ってそれを被った栗山選手は、頭のてっぺんから足の爪先までライオンズブルーに染まりました。
「ナイス、おかわり!いい奴やん。」まだ話もしたことない中村選手に心のなかで感謝しました。
ここで、気付かされたのが「セルフブランディング」です。自分自身を「商品」と捉え、社会に必要としてもらうために、自らの力でマーケティング・宣伝活動を行うこと。自らの強みや、技術や魅力、経験など、目には見えない価値を魅力的に、説得力を持って発信するスキルであり、文字通り「自分をブランド化」することです。
当然、プロ野球選手として野球で活躍することをファンの方も望んでいます。しかし、個人事業主である彼らは、それ以外でも活躍の場を広げることができるし、セカンドキャリアを考えれば、野球以外で強い武器を持っていることも大切です。
そこで、春季キャンプ初日の全体ミーティングの場で、選手、スタッフに対し、セルフブランディングの大事さを広報部としてプレゼンしました。
この場は、私の上司でもある飯田光男球団本部長や渡辺久信ゼネラルマネージャー(当時)、そして松井稼頭央監督(当時)から、今シーズンのチーム方針や、どのようにペナントレースの開幕戦に向けて臨んでいくかが語られます。
これまで、広報部長が前に立ち、プレゼンをすることは当然ありませんでした。しかし、飯田球団本部長はそれを許可してくれました。
2022年度の観客動員数は、12球団最下位でした。これには理由があることは2回目のコラムでお話ししましたが、「ファンあってのプロ野球」であることが改めて見直される機会となっていました。
そこで先ほどお話しした三浦知良さんのコラムの記事や、タレントの武井壮さん、元ホストで現在は実業家として活動しているROLANDさんのエピソードなどを用いて、セルフブランディングを築くために、ロールモデルを徹底して演じていることを話しました。
その中で栗山選手も例にあげ、自然な振る舞いから「ミスターライオンズ」というセルフブランディングを形成していることを話し、「いい見本が身近にいるので、みんな意識をしてやっていこう。そのために広報部は全力でサポートする」と選手たちにも約束しました。
今まで私が広報を担当していたのは、ホテルや鉄道、不動産、あるいはレジャー施設でした。それが今は、感情を持つ選手たちです。チームを訴求することも大事ですが、勝敗に左右されやすい性質があります。
しかし、選手個人であればプレー以外の違った側面を出すことで、一つの商品になると考えたのです。これが冒頭で掲げたキーワード1の「構想力」です。
次回、後編の記事では残りのキーワードも交えて「丸刈りとロン毛」についてお話しします。