現役大学生が「カンヌ国際映画祭」を現地取材!  世界の大舞台で見えた日本のエンタメが抱える課題

宣伝会議「学生記者企画」、フランスで現地取材を敢行!

「Advertimes」の読者である広告業界の方たちは、映画祭の後に開催される「カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル」の方が、なじみが深いと思いますが、同じ会場では一足お先に「カンヌ国際映画祭」が開催されています。

 

世界三大映画祭のひとつに数えられる、「カンヌ国際映画祭」ですが、今年で第77回を迎えました(ちなみに、残り2つはヴェネツィアとベルリンです)。

 

今回、東京大学大学院情報学環教育部×宣伝会議コラボの「学生記者企画」ということで、私は2024年5月14日から25日までにわたりフランス・カンヌで開催された、「第77回カンヌ国際映画祭」に記者として参加をし、現場の生の様子を取材してきました。

 

すでに、テレビや新聞などの総合メディアから映画業界の専門メディアまで、各メディアでアワードの結果を中心に、現地の様子は紹介されていると思います。そこで本レポートは、プロのメディア記者ではなく、教育学を専攻する現役大学生の視点も交えながら、お届けしたいと思います。

 

※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の企画・取材・執筆は教育部所属・佐藤良祐が担当しました。

私が「カンヌ国際映画祭」に興味を持ったのは、映画産業に関心があるからなのはもちろん、映画をはじめとする日本のエンタメ産業が世界の大舞台でどのような評価を受けるのか、その実態を見たいという考えがありました。

今年の「カンヌ国際映画祭」における日本勢の話題と言えば、黒澤明監督の「八月の狂詩曲」のワンシーンが公式ポスターを飾った、というニュースを聞いた方も多いのではないでしょうか。

映画祭のメイン会場であるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレの正面には、青を基調とした「八月の狂詩曲」の大きな横断幕が掲げられました。映画祭の会期中には、その部門の1つ「監督週間」を宣伝するためのポスターがカンヌの街じゅうに貼られます。

このポスターののイラストには北野武氏描き下ろしの作品が採用され、「ビートたけしTAKESHI KITANO」という日本語のサインを見ることができました。また、今年度は第71回同映画祭で最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和監督が審査員を務め、さらにスタジオジブリが団体として史上初めて名誉パルムドールを受賞し、映画祭の新たな歴史を刻むなど、日本にとっても話題の多い年となりました。このように、一部世界に熱心なファンの多い、黒澤監督や北野氏らは、会場内でも大きな存在感を発揮していました。

写真 映画祭が行われるカンヌの街

映画祭はカンヌの街全体を巻きこむようにして行われます。メイン会場のなかにも複数の劇場が存在しますが、出品作の上映は市内各地に点在する劇場にて行われます。また、メイン会場の隣の建物や屋外のエリアではちょうど同じ時期に国際映画見本市の「マルシェ・デュ・フィルム」が開催されており、多くの映画関係者が集う場となっています。

写真 会場内にはそれぞれの国が自国の作品をアピールするためにブースを出展。

会場内にはそれぞれの国が自国の作品をアピールするためにブースを出展。日本は文化庁が主体となって官民連携でジャパン・パビリオンを出展していました。メイン会場から海岸沿いを行くと、ビーチにはいくつものクラブハウスが立ち並び、夜になるとセレブや関係者らの社交の場へと一変します。その他には高級ホテル街やカジノがあり、これらもまた夜になると大勢の人々で賑わっていました。

写真 交流のための環境と仕事のための環境

会場には、映画関係者が交流をするためのカジュアルな場が多くある一方で、特にプレス向けに、取材や記事作成など、仕事に集中するための場というのもまた充実しています。交流のための環境と仕事のための環境がこのように上手く配置されており、それが快適に維持されているという点は、さすがこの映画祭の長い歴史の中で培われたものであるのだろう、と感心させられました。


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