副田高行デザイン、被爆者の衣服表す「ヒロシマ・アピールズ」ポスター公開

7月12日、日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)広島地区と広島国際文化財団、ヒロシマ平和創造基金の3団体が主催するキャンペーン「ヒロシマ・アピールズ」のポスターが公開された。今年度のデザインは副田高行氏が手がけている。

イメージ 「ヒロシマ・アピールズ2024」で制作された作品「遺品が訴えるもの」。

「ヒロシマ・アピールズ2024」で制作された作品「遺品が訴えるもの」。

「ヒロシマ・アピールズ」は、1983年に開始。言葉を超えて“ヒロシマの心”を訴えるポスターを制作するキャンペーンで、国内外に向けて平和を呼びかけている。毎年、JAGDA会員の代表者がボランティアで新しいポスターを1点制作している。

タイトルは「遺品が訴えるもの」。写真家・石内都氏の写真集『ひろしま』に掲載されていた作品をモチーフにした。被爆者の衣服がちぎれ、やぶれている様を写した。

今回のポスターについて、副田氏は次のようにコメントしている。

「戦後五年たって生まれた私には、とうぜん戦争の実感はとぼしい。戦後の空気はのこっていたが、毎年くりかえされる報道で、戦争のむごさや平和のたいせつさを感じていた。世界では、いまだに戦争がつづいている。人類は、いつまであやまちをくりかえすのだろうか。

『ヒロシマ・アピールズ』の指名があり、どうしたものかとしばらくは呆然としていた。ポスター一枚で、原爆のおそろしさ、平和、戦争反対をとなえることは、とてもたいへんな作業だとおもう。そんなこと自分にできるのか。私はふだん広告制作を生業としている。だから、デザイナーが頭のなかで描くイメージではなく、もっとリアリティのある表現はできないかと考えた。

当時の資料をしらべていくなかで、『ひろしま』という石内都さんの写真集にいきあたった。それは、出版社から依頼され、広島平和記念資料館・遺族同意のうえで撮影されたものだった。なかでも私の目をひいたのは、被爆者がその日身につけていた衣服だった。それはもちろんちぎれ、やぶれている。石内さんの解説によると、おおきなライトボックスの上において撮ったそうだ。その逆光の効果もあってか、不謹慎かもしれないが、悲惨さと同時にうつくしいとおもった。生なましさは消えて、おそろしいその瞬間をみごとに、象徴的に写しとっていると感じた。これなら、原爆のおそろしさを直截ではなく、シンボリックにつたえられるとおもった。この遺品は訴える。『あのできごとを、忘れるな』ということを。

石内さんの了解をえて、そのなかの一枚でポスターをつくった。現在でも遺族がたいせつに保管していた遺品が、毎年寄贈されるという。石内さんは、その後も毎年広島にいって撮影を行なっているそうだ。」(Photograph: Ishiuchi Miyako『ひろしま』hiroshima #71 Donor: Hatamura, T.)。

ポスターは広島市長に贈呈されたほか、8月11日まで、広島市内のバス停に掲示されている。また8月25日まで、東京ミッドタウン・デザインハブで開催している「日本のグラフィックデザイン2024」展 でも展示されている。

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