東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。今回は、2006年度TCC最高新人賞を受賞、今年2回目のTCC賞最終審査委員を務めた上田浩和さんです。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。今回は、2006年度TCC最高新人賞を受賞、今年2回目のTCC賞最終審査委員を務めた上田浩和さんです。
コピー年鑑にはじめて出会ったのは大学3年生の頃だった。ぼくにとってはそのシチュエーションがよかった。早稲田大学の、本部キャンパスにある大きな図書館。大きな窓から差し込む光のなかには埃がきらきら舞い、テーブルに向かう学生たちはシルエットになっていた。
大きな書棚の間にしゃがみ込みぼくは、一番下の段にあった分厚いコピー年鑑を手に取る。ケースから取り出す手間も儀式的だったし、表紙をめくるとパリッと音がして、新しい扉を開けたと思った。出会ったと思った。
その年鑑のなかで見たのが、「そうだ 京都、行こう。」だったのもよかった。早稲田大学の、図書館の、午後の光のなかで、「パリやロスにちょっと詳しいより京都にうんと詳しいほうがかっこいいかもしれないな。」に触れたら、そりゃ、コピーのこと好きになりますよ。
そして、その年鑑がほぼ新品だったのもよかった。何万人もの学生を抱える大学の図書館にあるのに誰も手に取った形跡がほぼないということは、広告って、コピーライターって、実は、人気のない職業なんだな。じゃあ、ぼくもがんばれば、この立派な本に自分の書いたコピーがのるかもしれない。それって最高だなと思った。