サバ塩焼き定食と共に訪れた二度目の転機
当時ビジネスマッチングの場においてメタバースが主流とならなかった理由を分析すると、「本当に信頼できる相手かどうかが分からない」という課題に行きつきました。アイコンやアバターでなぜか全員ピョンピョンしている状態では、名刺交換をしても商談をしても、相手をなかなか信頼できません。
またしても壁にぶち当たった私にヒントをくれたのは、、当時19歳ですでに所属するのは3社目というツヨツヨエンジニアの佐々木くん。グループ会社で働いていた彼の探し物を偶然見つけてあげた縁でランチに行くことになりました。
佐々木くんはサバ塩焼き定食を食べながら延々とブロックチェーンの話をしてくれたのですが、当時の私は全く興味がなく、「一刻も早く帰りたい……」と思っていました。
佐々木くんは間違って出品した自分の写真のNFTが8万円で売れてしまい、当時「ABEMA」などでも取り上げられていました。
しかしその直後にコロナにかかり、自宅の2.5畳の書斎で10日間を過ごしました。やることがないので、佐々木くんの話を思い出しブロックチェーンを調べてみると、これはものすごい技術だぞ……!とようやく気付いたのです。
詳細は次回以降に譲りますが、ブロックチェーンを簡単に説明すると「信頼を検証可能にしてデジタル上で相手に価値を提示したり譲渡したりできる技術」だと思っています。
そのため、メタバースがマスアダプションするための前提条件は、メタバース上で風変わりな外見のキャラクターがピョンピョンしていても、その裏側で「価値を正しく伝えたり、あるいは価値を譲渡したりできる、信頼できるブロックチェーンを社会実装すること」なのではないか、と思ったのです。リアル生活では難しい「貢献の可視化」が、逆にメタバースとブロックチェーンではやりやすいかもしれない、と。
(個人的には、「Fortnite」や「Minecraft」といったものもメタバースと言えると思っていて、それらはすでにゲームの世界ではマスアダプションしています。ここで言う「メタバース」は、現状しくみはつくられてはいるが、過疎化し肝試し会場のようになってしまっているB2B的なメタバースのことです)
そしてそのブロックチェーン技術を活用した分散型のインターネットである「web3」上では、メタバースはより信用に足るものになると確信しました。
そこで、コロナで隔離されており暇な私は、勝手にブロックチェーンやweb3の資料をつくり、当時の会社のメンバーに向けて自主的にオンライン勉強会を開催。
当時作成した資料。
SNSで「web3すげー!」とつぶやいていました。その流れで自然と、博報堂が立ち上げようとしていたweb3の会社に参画することになりました。それが現在私が代表を務めている、博報堂キースリーでした。
振り返れば、上海支社もその後立ち上げた台湾支社も何度か単年黒字を出し、最後の年には両拠点で同時に黒字を達成して、堂々と退任した私。自分で言うのもなんですが、読広時代の私のレピュテーションはきっと悪くなかったと思います。
ただ、帰国後に別の広告会社(しかも競合他社)に転職し、その後まさかグループ会社に戻ってくるとは夢にも思っていませんでした。その時その場所で、自分が活躍していけるユニークな市場を探し、その場で一生懸命頑張ることが、思いもよらない未来に繫がるのだな、と感じました(そして19歳の男子の言うことを鵜呑みにすることも大事)。
このような紆余曲折とありがたいご縁があり、博報堂キースリーという自分が望む場所に立たせてもらっています。しかしまだただのスタート地点、ここからが本番です。
で、web3。「web3って結局何なの?」」「web3専業の広告会社ってどいうこと?」」というお声が聞こえてきそうです。そんな皆さんに向けて、次回、「誰でもわかるWeb3基礎講座」をお送りします。
【次回に続く】