サントリー×DEAN&DELUCAに学ぶ、生活者の「LOVE」につながるコミュニケーション

今の時代に広告で「好感」はつくれるのか?

━━広告やコミュニケーションでLIKEやLOVEは作れると考えますか?

和田:僕は広告の力を信じているので、つくれると思います。重要なのは、広告の中にストーリー性と人間性が含まれていること。どうしても広告って商品が美味いとか言いたくなるのですが、できるだけそれを抑えて、商品がある暮らしは素敵だと生活提案できるようにしたいです。もちろん、例えばサプリメントのセサミなら70代の方など商品毎にターゲットは異なるので、それぞれの人が自分事として共感できるストーリーも必要です。

菅野:ただの機能的価値では、コミュニケーションをしてはいけないと思っています。

大切に考えているのは、共感の連鎖です。DEAN & DELUCAでは、ホリデーの時期にBAG FOR HAPPINESSという取り組みを15年以上続けています。ロゴが入ったバックを皆さん見たことあると思うのですが、ホリデー限定のバックの売上の一部を子どもの権利の実現を目指して活動をする国際支援団体『セーブ・ザ・チルドレン』を通し、子どもたちの食を支援しています。その輪もひろがり、「つくることは生きること」を掲げ活動されている知的障がい者支援施設『しょうぶ学園』の方々とつくるオーナメントもそのひとつです。入所者の方々は、毎年絵柄がかわるプロダクトをたのしみに描いてくださったり、お客さまも寄附ということではなく、想い包む贈りものとして購入した方がInstagram上で共感のメッセージをくださるなど、大きく広がっているプロジェクトのひとつです。

写真 人物 個人 菅野 幸子氏

━━顧客以外のステークホルダーの「好き」を作るためのコミュニケーションをどう考えますか。

和田:2011年の東日本大震災の直後、震災広告「歌のリレー」という形で企業広告を行いました。矢沢永吉さんなど71名のタレントがボランティアで出演し、『上を向いて歩こう』を歌いつなぐ企画です。この時は正直、サントリーが好かれるために企画を立てたのではなく、大地震で苦しんでいる人たちを励ますことができたらという思いでつくりました。

このCMは最短納期で実現することが1番重要でした。多くの企業が広告を自粛し、ACジャパンのCMしか流れない当時の状況を変えたいと思い、震災が起こった3日後は実施を決め、2週間でタレントにアポを取って1カ月も経たないうちにオンエアしました。電通、博報堂、大広と広告代理店も一丸となりつくったCMでした。

2021年のコロナ禍に行った「人生には、飲食店がいる」というメッセージをCMやポスターで発信する企画は、ある程度狙いました。コロナ禍で1番苦しんだのは飲食店だと思います。サントリーの商品を扱っているかどうかに関わらず、全ての飲食店さんを応援するつもりで企画。飲食店の方からやってくれてありがとうと反響が大きく、このポスターを今でも貼ってくれているお店も多いです。

菅野:おいしいものを届けるとはすべてはつながりからできています。

コロナ禍に「レストランシェフたちとの缶詰コレクション」をつくりました。缶詰は、ポルトガル料理でもあるように長期保存するための“製造方法”だけではなく、缶詰だから生まれる味や食感を追求する“調理法や器具”でもあります。

このプロジェクトは、外出自粛で影響を受けたレストランや流通先を失った魚介卸業の皆様に変わって生産者支援という視点もありつつ、手のひらで味わえる缶詰という新たな価値の気づきでもありました。食とは、どんなときでも平等で笑顔になりえるもの。関わってくださる生産者やつくり手の人たち、召しあがってくださるお客さまが健やかにいてくださることは、食文化を守ることにもつながります。関わってくれたシェフたちも同じ想いの仲間としてひろがり、お客さまにもそのストーリーが好感として伝わった取り組みでした。

経営に対して「好感」の効果をどう示すか?

━━「共感」「好感」が企業経営に与える効果を社内でどう共有していますか。

和田:毎年、企業好感度調査を行って、競合メーカーと比較しながらサントリーが好きかどうか、年代・性別ごとにデータを取っています。するとサントリーが大好きだと答える人は、実際に生活の中でサントリー製品を、平均を大きく上回って使っていると分かり、好感が購買に繋がっていると改めて感じました。

特に好感の影響が顕著なのは、健康食品と水です。健康食品は、サントリーという信頼を理由に買っていただけることが多いから。また、水も最近は安いプライベートブランドもありますが、それでも水を大切にしているサントリーで買いたいと思っていただけています。

つまり、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)を考えた際、企業に対する共感・好感は経営に大きな影響を与えています。そこで共感・好感が経年で増えているか注視し、年代別に弱いところを発見して、そこに向けたメッセージや商品を出すといった考え方をしています。

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