LIFULL×八代目儀兵衛のマーケターに学ぶ「経営層と本気で取り組むブランディング」

ブランドは企業にとって、重要な資産のひとつ。それだけにブランド構築も、その資源をいかに事業に活用していくかの意思決定も経営ゴトであるといえます。一方で、その構築プロセスや効果の可視化が難しいブランディングだけに、それに取り組むコミュニケーションのプロには、社内でいかに理解を得るか。経営におけるブランド戦略の役割の理解醸成が欠かせません。それでは近年、急激にブランド価値を高め、ステークホルダーからの支持を高めているブランドを担うマーケターはどのような姿勢で仕事に取り組んでいるのでしょうか。ここでは「経営層と本気で取り組むブランディング」をテーマにしたLIFULLの川嵜鋼平氏、八代目儀兵衛の神徳昭裕氏の対談の様子をレポートします。
※本リポート記事は、2024年6月12日(水)に東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開催した「宣伝会議サミット2024(夏)東京」のセッション内容をテキスト化したものです。

写真 人物 写真中央からLIFULL 執行役員 CCO LIFULL HOME'S CMO クリエイティブ本部 本部長 兼 LIFULL HOME'S事業本部 副本部長 川嵜 鋼平 氏、写真右は八代目儀兵衛 取締役 CMO 神徳 昭裕 氏。

写真中央からLIFULL 執行役員 CCO LIFULL HOME’S CMO クリエイティブ本部 本部長 兼 LIFULL HOME’S事業本部 副本部長 川嵜 鋼平 氏、写真右は八代目儀兵衛 取締役 CMO 神徳 昭裕 氏。

それぞれの会社によって異なる!? 「ブランド」の定義を聞く

――自己紹介および会社紹介をお願いします。

川嵜:2017年に入社し、チーフクリエイティブオフィサー(CCO)として企業グループのブランディング全体を統括しています。CCOの業務は一般的にデザインと思われがちですが、自分はかなり手広く行なっています。事業を通してどんな社会課題を解決するかというアジェンダ策定や、社会課題解決に取り組む企業文化を社内に根付けるインナーブランディング、コーポレートブランディングなど社内外のブランド設定全般を手掛けています。

LIFULLは「事業を通じて、社会課題解決に取り組む」ことを旗印に多様な事業に取り組む企業グループです。主力事業である不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」に加えて、2033年には3軒に1軒が空き家になることを問題視して空き家を利活用する「LIFULL 地方創生」や、超高齢社会に寄り添う「LIFULL 介護」など、さまざまな事業を展開しています。

神徳:2019年に八代目儀兵衛に入社しCMOを務めています。それまでは年商2000億の総合通販会社、250億の高速バス会社を経験し、八代目儀兵衛は20億ほどなので、大中小規模のEC・マーケティングを経験してきました。

八代目儀兵衛は売上の約半分がお米の通販、中でもギフトがメインの会社です。「八代目儀兵衛を通した感動体験を増やすことでお米離れをゼロにする。」ことをビジョンに掲げ、2つの直営店経営とレストラン・ホテルへの米卸、さらに儀兵衛の技術で他社のご飯品質を向上させるソリューション事業も展開しています。

儀兵衛は「ブレンド米」技術も特徴のひとつです。お米の従来の価値は、新潟県産コシヒカリなどの産地銘柄にありました。しかし米の消費量が減り米屋が廃業する中で、今までと違う米の価値が求められるように。そこで、江戸時代から続く米屋の8代目である今の代表が17年前に八代目儀兵衛を設立し、ブレンド米を新たな切り口として戦っています。

お米のギフトも、従来の米にはなかった付加価値で米離れゼロを目指しています。お米って見た目で差別化できないですし、米の相場は決まっているのでそれ以上の価値を出すことが難しい。そこで、風呂敷でお米を包んだギフトを開発し、創業地である京都らしさを意識して付加価値を加えることでヒットしました。

――まずそれぞれの考える「ブランド」の定義を教えてください。

川嵜:ブランドとは、生活者・従業員・パートナー企業など、様々なステークホルダーのマインドに存在するものと定義します。そしてブランディングとは、ブランドに対する望ましい連想が継続的に形成されるように、例えば社員への教育や、ブランド中心の事業戦略を行うことで、最終的に企業が成長することだと考えます。

イメージ LIFULL「しなきゃ、なんてない。」kv

例えば、当社は事業を通して様々な社会課題の解決に取り組んでいるので、LIFULLが目指す社会課題が解決された、実現したい未来を「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトにしたCMをはじめとする広告コミュニケーションで描いています。

このコーポレートコミュニケーションは我々が実現したい未来を示したものです。こだわりのポイントは、全てLIFULLの事業を通じて実現できる未来を描いている点。例えば同性で子育てをするカップルが登場しましたが、実際当社ではLGBTQ+フレンドリーに住まいを紹介できるサービスを提供しています。こうしたCMは基本的に生活者向けですが、その中には従業員や株主も含まれるので、結果的に多様なステークホルダーにブランドらしさが伝わると思います。

「ブランディングといえばプロモーション」という思考に走りがちですが、当社は戦略を司る羅針盤がブランドなので、プロモーションだけでなくプロダクト・プライシング・プレイスの全てでブランドらしさが体現するように、マネジメントすることを心掛けています。

写真 人物 川嵜氏


次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ