オリオンビールが宣伝予算を沖縄県内に集中投下する理由

沖縄をマーケティングする

3つのポイントを押さえ、独自性と新規性を追求するためにオリオンビールが実施している施策について紹介した。まずはひとつ目のポイントについて、お祭り好きな県民性を意識して2023年にコロナによる中断を経て4年ぶりに「ORION BEER FEST2023」を開催した。

「3カ所の会場で10万人弱に参加いただいた。こうしたリアルのイベントを通じて県民の皆さまとのリアルな接点を持つことを大切にしています」(湖東氏)

また、2024年に「オリオン ザ・ドラフト」をリニューアルした際には1万5000人以上の県民への調査実施や、県民の意向をふまえたパッケージデザインの開発も行った。こうした活動の結果、大手4社との比較でもオリオンビールの購入意向も向上し、味の評価でもリニューアル商品が高い評価を得ることができたという。

イメージ 15301人への大調査についてのスライド

2つ目のポイントについて湖東氏は「ビールは世界的に見ても下降している市場です。そこを県内ナンバー企業としてカテゴリーを伸ばさなければならないと考えています」と話した。そこで、沖縄の魅力を表現しながら、ビールの味や香りだけではなく見た目でも楽しむための商品として、カラービールを発売する方針を紹介した。

3つ目の県外向けの施策として、4月末から5月初旬の大型連休の期間に東京・渋谷で開催した「秒で沖縄に行けるBar」を紹介した。「沖縄滞在中の素晴らしい体験も、那覇空港を飛び立った瞬間に日常に戻ってしまって思い出になってしまう。それをどうリフレッシュするのかを考え、忘れちゃうんだったら僕たちから本土へ行こうということで実施しました」(湖東氏)。Barには1000人以上が来訪しただけではなく、メディアによる露出もあり、沖縄への想起をオリオンビールにつなげることに成功したという。

湖東氏は「とにかく沖縄をマーケティングすることでオリオンビールにつなげ、オリオンビールが沖縄の魅力を県外でマーケティングする語り部とすることを大切な考え方としています」と各施策に込めた思いを話した。

オリオンビールはミッションに「沖縄から、人を、場を、世界を、笑顔に」と掲げている。ビジネスをさらに伸ばしていくためにはすでにナンバーワンの地位を誇る沖縄での成長だけでなく、県外や海外への展開も選択肢のひとつといえる。一方で湖東氏は「沖縄という素晴らしい場所で圧倒的なトップシェアを守ることが中長期的に県外、そして海外での成長につながるということを強く信じているので、広告宣伝費も県内に全てを投下しています」と力を込めた。

湖東 彰彦 氏

オリオンビール 執行役員 マーケティング本部長

慶應義塾大学環境情報学部卒。MHDモエ・ヘネシー・ディアジオやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの外資系企業で日本、米国、シンガポールを拠点に20年間消費財のマーケティングに従事。2017年からアマゾンジャパンでAmazon FreshとPrime Nowの事業部長を担った後、2020年にSmartNewsにマーケティング部門の責任者として入社。2023年4月から現職。

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