コミュニケーションが生んだ3つの効果
コクヨのグローバルステーショナリー事業本部は消費者との対話の手段のひとつとして、SNSとコミュニティ運営に取り組んでいる。XとInstagramともにフォロワーは10万人以上。さらに、学生や文具好きを対象にコミュニティも複数運営しているという。
「顧客との直接的なコミュニケーションには三つのメリットがある」と武市氏は話す。まず一つ目は、UGCの創出だ。コロナ禍のさなか、出社ができないために投稿用の写真が撮影できずInstagramの投稿が滞りかけた際には、フォロワーに呼びかけ、彼らの撮影したものを投稿に使用させてもらったこともあったそうだ。
二つ目のメリットは共創。その代表例ともいえる「本に寄り添う文鎮」は、中高生を対象としたコミュニティで出た意見から生まれた商品だ。ブッククリップを使用している学生が多い一方で、本をめくる際の手間などに不満も感じていたという。そこで、彼らの不満を解消する新しい文具として「本に寄り添う文鎮」の開発に至った。この商品は、2022年に限定販売をしたところひと月で完売。反響を受けて2024年に全国販売をスタートしている。
三つ目のメリットは社員のモチベーション向上だ。
「顧客の声を聞くことで、社員が顧客をより意識できるようになりました。また、顧客からの感想を直接受け取ることもあり、開発から営業まで職種を問わず、社員のモチベーション向上につながっています」(武市氏)
SNS運用は、インプットを十分に行ってチームで取り組む
メリットを生むには、SNS運用やコミュニティの運営を軌道に乗せる必要がある。実際の試行錯誤を通じて得た、SNSやコミュニティなどの顧客コミュニケーション施策を進める上での重要点について解説した。
武市氏は、「SNS運用においてはまず、インプットが重要だ」と強調する。SNS運用の成功には、プラットフォームの特徴やユーザー層、アルゴリズムの理解が欠かせないという。自身も、書籍やプラットフォーム主催のセミナーで情報収集を行ったそうだ。さらに、学生にウケるコンテンツを知るべく、学生に人気のアカウントだけをフォローするアカウントを作成して閲覧したり、実際にそのSNSを使う学生の声を聴いたりと学生心理の理解も深めている。