生活者に広く深い情報を発信 社内広報にも効いた島津製作所のオウンドメディア

自前の情報発信拠点として多くの企業・団体が注目するオウンドメディア。戦略の立て方や効果測定の方法、制作のコツを探ります。
今回は島津製作所のオウンドメディア「SHIMADZU TODAY」制作の裏側に迫りました。

※本記事は、広報会議2024年9月号(8月1日発売予定)の転載記事です。

島津製作所のオウンドメディア「SHIMADZU TODAY」DATA

URL: https://www.shimadzu.co.jp/today/index.html
開設: 2020年1月7日
所轄部署
(うち人数):
コーポレート・コミュニケーション部(5人)
制作体制: 取材・編集は内製。ウェブサイトの制作・更新はグループ会社のウェブ担当者が行っている
コンセプト: 活躍する社員の姿や多彩な技術、社会貢献活動、1875年から続く歴史などを切り口に、“SHIMADZU”の“今日”を発信
更新頻度: 月3~6本(週1~2本)
総記事数: 約300本
CMS: Drupal
効果測定: PV数の前年同月比伸び率で効果を測定

分析計測機器、医療機器などを製造する島津製作所は、2019年に同社のSDGsや文化・スポーツ活動など、主に事業以外の取り組みを社外に伝えることを目的にSNSの運用を開始した。しかしSNSは性質上、情報がすぐに流れて人の目に触れなくなってしまう。

そこでアーカイブの場として、2020年にオウンドメディア「SHIMADZU TODAY」を開設した。

実データ グラフィック 広報会議9月号誌面

広い情報発信の文化醸成

同メディアは、BtoB企業である同社の顧客だけでなく、取引先や株主、生活者にも理解してもらいやすい内容の発信をする場となった。そこでこれまで課題となっていた、同社で行う専門性の高い事業を伝える場としても活用することに。

このような発信体制となり特に変わったのは、発信できる情報の量と深度だという。企業の取り組みの紹介記事ひとつとっても、写真の枚数が増え、携わった従業員の思いなども伝えられるように変化した。

「当社の事業は専門的な知見がある方でないと伝わりづらいものが多くあります。それらを『この事業にはこんな意味があります』『こんな社会的インパクトがあります』とかみ砕き、視点を変えて伝えることに注力しています。

当社の事業を生活者の方にも身近に感じていただけるようにするのが、オウンドメディアの役割だと考えています」と、コーポレート・コミュニケーション部の竹内雅仁氏。「『SHIMADZU TODAY』のおかげで、社内でも生活者に広く伝えるという新たな文化ができたと感じています」(同部 長嶋美穂氏)。

インナーブランディングに貢献

社外向けに立ち上げた同メディアだが、社員の自社理解の促進、インナーブランディングや社内コミュニケーションにも大きく役立っているという。

「事業が非常に専門的かつ幅が広いため、社員であっても他部署が何を行っているのかを把握することはなかなか難しいのが実情です。社外向けに始めた発信ですが、社員の自社理解を深めることにも一役買っています」(竹内氏)。

同メディアで企業の取り組みを紹介することに社員からポジティブな反応が返ってくるようにもなった。表に出す機会の少ない環境問題や社会課題にかかわる取り組み、海外のグループ会社の取り組みの発信が、グループ全体への理解や社員のモチベーション、良い雰囲気の醸成につながっているのだ。

「メディアでの紹介により『部内の会話が増えた』という報告を受けたり、従業員が個人アカウントで『こんな風に取り上げてもらったのは初めて。みんなに読んでほしい』と拡散してくれたりするなど、嬉しい反応をもらっています。今後も『自分の仕事が社外に発信された』と社員が喜んだり、特別感を持ってもらえたりするようなメディアにできたらと思います」(竹内氏)。

情報の中心地から

週に1~2回という高い更新頻度を継続できているのは、記事制作を担う部門に情報が集約される社内体制であることが大きい。

同部門内にはプレスリリースやイントラネットを作成するグループ・IRを担当するグループがあり、新製品や社内イベントなどの情報が自然と集まってくる。それらを積極的にキャッチし、どれを発信するかを検討する。

取り上げるトピックスは、同社の中期経営計画で重点領域に定めている、ヘルスケア、グリーン、マテリアル/インダストリーに即した内容。そうした事業の紹介はしつつも「苗字の日」などの身近な話題や、「ガールズデイ」への参加レポートなど、多角的な記事を作成している。

「難しい情報を分かりやすく伝えるとともに、島津製作所を身近に感じていただくためのつくり込みを丁寧に行う方針は、SNSの立ち上げから現在も変わっていません」(同部 末永光氏)。

4年の運用で記事数もノウハウも溜まってきた。すぐに売り上げにつながるものではないが、経営陣からの情報発信の場としても認識されている。今後は、記事が社内外の人にどんな影響を与えているのか、の解析にも力を入れていく。

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