ヒット商品となった単身者向け食洗機「SOLOTA」の商品開発とプロモーション

パナソニックの水嶋理子氏と細井真衣氏が、6月24日~7月1日に開かれた「宣伝会議サミット2024夏」に登壇し、「5つの顧客理解が可能にした新市場開拓 若年層ひとり暮らし向けの食洗機「SOLOTA」の誕生秘話」と題して講演した。

若年単身世帯をターゲットに商品開発

パナソニックは2023年にひとり暮らし向け食洗機「SOLOTA(ソロタ)」を発売し、約3カ月で販売台数計画比2倍を記録するなど、大きな反響を呼んだ。それまでファミリー向けをターゲットとしてきた食洗機市場で、単身世帯向けという新規市場を開拓した「SOLOTA」の企画開発からプロモーションまでを、同社の水嶋理子氏と細井真衣氏が解説した。

前半では細井氏が商品企画について紹介した。一生涯を通じて食洗機を使用した場合、約460日分の時間と260万リットルの水が節約できるというメリットをデータで示した。

一方で、現在の普及率は約29%、特に20〜30代の単身世帯では6%台と低い。細井氏は「家族であってもひとり暮らしであっても食器洗いという家事は発生します。当時単身専用をうたう商品は存在しませんでしたが、ニーズはあるのではないかと考えました」と説明した。

パナソニックではライフステージに合わせて家電製品をラインナップしているが、新規層開拓が普及のポイントになると考え、食洗機においてエントリー層となる20〜30代の単身層向けの商品開発をスタートした。

開発にあたっては、部門を横断してターゲットと同世代の社員を集めたプロジェクトを結成した。単身世帯が日常的に使用する食器の平均点数の調査結果なども踏まえ、食洗機の容量を6点の食器とカトラリーが入るものに設定。小型で設置工事も不要という現在の仕様に至った。

「デザインのコンセプトは『洗える食器棚』としました。透明の窓は洗浄中の様子も見え、設置による物量感も軽減しました。ひとり暮らしの忙しい毎日の食器洗いの手間を低減する相棒になりたいという思いから『SOLOTA』と名付けました」(細井氏)

話題づくりと自分ごと化の二本の柱を意識したプロモーション

後半は水嶋氏がターゲットに届けるためのプロモーション展開について解説した。水嶋氏はプロモーションにおける課題を「そもそも食洗機に興味のないユーザーに商品の存在を伝えることが重要だった」と話した。

調査によるとターゲット層の47%が食洗機に興味・関心がなく、必要性を考えたことすらない人が約67%を占めた。一方で、単身世帯も効率的な家事への関心は高く、他の世代と比較して時短や効率化を目的に家電や家事代行サービスへの投資意向も高いというデータもあった。そこで「食器洗いが手間であることを自分ごと化してもらえるように、気づきと共感を重視したプロモーションを設計しました」(水嶋氏)。

次のページ
1 2
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ