顧客の心をつかみ、売上を拡大していくために「ファンマーケティング」の重要性は高まっている。しかし、具体的にどのようにファンを増やしていけばいいのか、どんなコミュニケーションが効果的なのか、いまいちよくわからないというマーケティング担当者も多いのではないだろうか。
本記事は2024年7月5日(サードパーティCookieの利用廃止撤回前)に開催された「宣伝会議リージョナルサミット2024夏 in 福岡」から、注目セミナーをレポート。JR宮崎シティの小池 洋輝氏はJR九州が取り組むまちづくりプロジェクトを、ヤプリの金子 洋平氏はアプリプラットフォーム「Yappli」の最新事例を紹介した。
共創体験による都市ブランディング
小池氏は2023年4月に開業した「ABURAYAMA FUKUOKA」を例に挙げ、まちづくりの高付加価値化について説明した。福岡中心部から車で30分という立地にある油山は、福岡市が管理していた油山市民の森と油山牧場がある山。140ヘクタールという広大な敷地は自然が豊かで、夜は市内の夜景が一望できる好立地であったものの、市民はもちろん、観光客もほとんど訪れていなかったため、リニューアルして人を呼び込みたいというのが福岡市の想いだった。
JR宮崎シティ代表取締役の小池氏。「人と都市と自然の共生」をコンセプトにすることが、福岡の都市ブランディングにつながると提案した。
これに対し小池氏は、「人と都市と自然の共生」をコンセプトに油山を再生することが、福岡の都市ブランディングにつながると提案。福岡という土地の本質的な魅力は、再開発が進む博多駅周辺、天神周辺という都市部だけではなく、自然豊かな土地がすぐそばにある点に着目し、隣接都市の糸島市や福津市だけではなく、福岡市内にも自然豊かな土地があることをアピールしていく必要があると強調した。また、東京やNY、ロサンゼルスという大都市を目指すのではなく、海外の「第3極」の都市(シアトル、ポートランド、バルセロナ、バンクーバーなど)のような、ワークライフバランスが整いやすく都市と自然が共存し豊かな生活スタイルが叶えられる都市を事例として挙げ、「暮らす、遊ぶ、働く、学ぶ、感じる」などをキーワードして事業を展開。100%再生可能エネルギーを利用する「ハチドリ電力」を筆頭に、シェア農園、コンポスト事業などはスタートアップ企業と協業。「森のオフィス」というコワーキングスペースや、スノーピークと展開したキャンプフィールドなど、仕事もできる、家族とリラックスもできる、あるいは同時にそれらができる場所として作り上げたという。
自分たちが発信者、顧客が受信者という一方通行ではなく、「一緒に作っていく」という共創体験が重要だと認識していた
「油山を日常にできないか」という問いを、プロジェクト当初から持ち続けていたという小池氏。そのためには、自分たちが発信者、顧客が受信者という一方通行ではなく、「一緒に創っていく」という共創体験が重要だと認識していたという。敷地内のレストランでは生ごみをたい肥にしてシェア畑で活用し、採れた野菜を料理にして提供したり、牧場内で搾った乳をチーズに加工してお店で味わえたり。こういった活動を楽しみながらできることが、価値となりファン化につながるという。
「箱崎グリーンイノベーションキャンパス」というコンセプトを掲げ、進化を遂げる街を目指す。
また、九州大学箱崎キャンパスの跡地活用についても言及。「箱崎グリーンイノベーションキャンパス」というコンセプトを掲げ、都市の中に緑を設けつつ、さまざまな人が交わってイノベーションを起こし、進化を遂げる街を目指すという。多様性にあふれる人々が集い、方向性の異なる発信ができる場所になることが、福岡という街のファンづくりにつながると締めくくった。
アプリを顧客との架け橋に。CRMにも
続いては800以上のアプリを開発・支援しているヤプリの金子氏が登壇。ファーストパーティーデータの活用が重要であることを説明し、それには自社アプリが活用できることを紹介した。ユーザーの手元にあるスマホに、企業との入り口ができること、スマホに最適化されているために分かりやすいこと、プッシュ通知が利用できることをその理由に掲げた。
ヤプリ 執行役員CCOの金子氏。ファーストパーティーデータへの意識が高まるなかでの、自社アプリ活用の有効性を説明した。
その後、全国各地の企業がどのようにアプリを活用しているのか、具体事例を交えて解説。まず「南海電鉄」のアプリでは、商業施設とお客様とのコミュニケーションを深化させる目的で開発。複数施設のキャンペーンやクーポン配信などを一括することで、アクティブユーザー数が3割増加。取得したデータを元に、次なる打ち手を考案できるという。
「ピエトロ」の公式アプリは、可愛らしい世界観によりユーザーが愛着を持てるアプリに仕上がっている。実店舗でもオンラインでも使える共通ポイントシステムがアプリ内に組み込まれ、アプリ限定キャンペーンなどを展開。アプリ経由でのショッピングや、アプリ内に掲載されているレシピの閲覧ユーザーも増加。プッシュ通知によるお客様アンケートは、2,000件以上の回収となった。
ピエトロやシャボン玉石けんなど、全国各地の企業がどのようにアプリを活用しているのか、具体事例を交えて解説。
福岡を代表するメーカー「シャボン玉石けん」は、アプリ活用により新しいファン獲得を目指している。紙の会報誌と連動し、AR機能で楽しめるコンテンツを盛り込んだり、製品使用ノウハウを紹介する動画を見れるようにしたりと、アプリ限定のコンテンツも用意。客単価アップに加え、客層の広がりも見せている。
ラーメンレストラン 「どうとんぼり神座(かむくら)」は、コアファン獲得のためにアプリを活用。これまでの「替え玉無料券」のような、無差別に配布するクーポンではどれほどの効果があるのか可視化できていなかったが、お客様の会員ランクごとに適切なコミュニケーションを発信し、クーポンの利用を促進させると同時にコアファンを増やしている。
クリーニングの白洋舎は、新しい集配サービスの認知度アップにアプリを活用。同時にお客様情報を管理し、お店をより好きになってもらうコミュニケーションをとっている。
「プロント」では、ロイヤルカスタマーの位置づけをアプリ内で行い、購買履歴をもとに施策を練る。
プロント、白洋舎、お仏壇のはせがわなど、様々な企業でYappliが活用されている。
「お仏壇のはせがわ」は、若い世代に向けた葬儀に関する情報などをアプリに盛り込み、V字回復を実現。故人の情報を入力することで、時期ごとに適切な情報が配信されるという。
アプリが販促ツールでありながら、CRMとしても機能させることができるという点を強調した。
お問い合せ
株式会社ヤプリ マーケティング本部
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