自社ブランドやサービスを効果的に伝える、ターゲティングとアプローチ施策

企業ブランドやサービスがターゲット層に届き、さらに拡散する方法とは? 2024年7月に開催された「宣伝会議リージョナルサミット2024夏in 大阪」から注目のセミナーをレポート。牛乳石鹸共進社の宮崎 清伍氏はフラッグシップ商品であるカウブランド赤箱再生の取り組みについて、Outbrain Japanの井料 武志氏はインターネット上での効果的な広告配信について、リアルとデジタルの両面から施策や事例を紹介した。

看板商品を多方面から検証しV字回復を達成

牛のマークの「カウブランド」石鹸で知られる日用品メーカー牛乳石鹸共進社(以下略牛乳石鹸)。フラッグシップ商品のカウブランド赤箱(以下略赤箱 )は今もなお昔ながらの釜だき製法(けん化塩析法)で生産されており、天然うるおい成分を含む肌あたりのやさしい石けんとして幅広いユーザーに親しまれている。年間 販売数約一億二千万個を誇る同社だが、誕生から96年間、売り上げは順風満帆だったわけではない。ここまでさまざまな苦労があったと宮崎氏は語る。

写真 牛乳石鹸共進社 コーポレートコミュニケーション室 室長の宮崎氏。「新しい赤箱を作り直すのではなくて、今持っているものを見直して再度PRしていくよう方向転換をした」と、宮崎氏は振り返る。

牛乳石鹸共進社 コーポレートコミュニケーション室 室長の宮崎氏。「新しい赤箱を作り直すのではなくて、今持っているものを見直して再度PRしていくよう方向転換をした」と、宮崎氏は振り返る。

赤箱の売り上げに陰りが見え始めたのは1991年。1990年前後から市場で台頭してきた液体ボディソープの影響もあり、2011年には売り上げが過去最低となった。宮崎氏は「会社が100周年を迎えたことをきっかけに赤箱が商品ラインナップから消えるのではという話まで持ち上がった」と明かす。しかし牛乳石鹸といえば赤箱のイメージが強い。「フラグシップ商品がなくなるのはさすがにどうか」と社内で議論が重ねられ、売り上げ回復を目指し赤箱再生化プロジェクトが立ち上がったという。

赤箱リブランドに際し「付加価値をつける」「洗顔石鹸にシフトする」などさまざまな施策が検討されつつも、「これまでのお客様はどう思うのか」と踏み切れずプロジェクトは難航する。その時に着目したのが、コスメ・美容の総合情報サイトの口コミだ。赤箱は、ハトムギ化粧水・ニベアクリームと並び「プチプラコスメ三種の神器」として女性から注目を集め始めていた。赤箱に対するユーザーのリアルな声に目を通した結果「新しい赤箱を作り直すのではなくて、今持っているものを見直して再度PRしていくよう方向転換をした」と、宮崎氏は振り返る。

高評価コメントだけではなく、「石鹸を使っていることを知られるのが恥ずかしい 」といったネガティブな意見も汲み取った。それらを克服する戦略のひとつとして、赤箱石鹸を愛用している女性を「赤箱女子」と定義し、実際に使っている様子をSNSで拡散するプロモーションをスタート。少しずつ認知が上がってきたタイミングで、京都に「赤箱 AWA-YA」という期間限定ポップアップショップをオープンした。宮崎氏は「牛乳石鹸のトレードマークであるリアルな牛のデザインが、意外にも『可愛い』という声が多かった」と、グッズやコラボ商品の展開を増やし話題性を高めていったという。

写真 「牛乳石鹸のトレードマークであるリアルな牛が、意外にも『可愛い』という声が多かった」と、グッズやコラボ商品の展開を増やし話題性を高めていった。

「牛乳石鹸のトレードマークであるリアルな牛のデザインが、意外にも『可愛い』という声が多かった」と、グッズやコラボ商品の展開を増やし話題性を高めていった。

コラボ商品は多岐にわたり、子ども向け玩具の製造販売を行う「バンダイ」とはガシャポンのノベルティ、アウトドアブランド「マタドール」とは濡れた石けんが乾く石鹸 ケースのコラボ。ほかにもホテル、アパレルブランドなどさまざまな異業種とのコラボを展開し、当初は60代以上だったロイヤルユーザーの年齢層が30代まで拡大。若年層への赤箱の普及が成功し、売り上げは1991 年の88%まで回復した。

宮崎氏は売り上げ回復の理由を「右肩下がりの固形石鹸市場の中でも『やっぱり赤箱が良い』と選んでくれる、根強いファンがいたから」と語る。そして「赤箱を90年以上も生産し続けられたのは、消費者に愛され続ける魅力があるからこそ。そこを突き詰めて検証し、どのように活用していくかというところに時間をかけたことが、成功に繋がったと思う」と言葉に力を込めた。

イメージ outbrainロゴ

豊富なデータとAI技術で最適な広告配信を

オープンインターネット上で広告配信テクノロジープラットフォームを提供するOutbrain。新聞社、ニュース、専門誌など300以上のトップパブリッシャーとネットワークを構築し、提携するウェブページからのシグナルを受け取ってAIで分析。創業時から培ってきたユーザーの興味関心やキャンペーンに関するデータを元に、メディア上に最適なオンライン広告を配信する。マンスリーアクティブユーザー数はモバイルで7,308万人、PCで2,129万人にのぼり、大手プラットフォームと肩を並べる国内トップレベルのリーチを実現している。

写真 人物 Outbrain Japan カントリーマネージャーの井料氏。オープンインターネットに多くのユーザーが長時間接触していることを説明 。

Outbrain Japan カントリーマネージャーの井料氏。オープンインターネットに多くのユーザーが長時間接触していることを説明。

Outbrainが広告を配信する「オープンインターネット」とは、アカウントの事前登録やID管理などを必要としない、誰もが自由に利用できるサービス環境のこと。これに対しYahoo、Google、Facebookといった、大手プラットフォームやSNSなどのようにアカウントやIDの登録が必要な環境を「ウォールドガーデン」という。井料氏は「意外と思われるかもしれないが、利用時間の長さを比較するとオープンインターネットの方がSNSなどのウォールドガーデンよりも約2倍長くなっている」と、オープンインターネット上に多くのユーザーが長時間存在していることを説明。しかし、広告予算の配分はそれとは相反していることから、広告主に向け、より効果的かつ効率的な予算配分を検討することの重要性も述べた。Outbrainと提携しているトップパブリッシャーに関しても、ユーザーがその記事の購読を目的にアクセスをするためページの閲覧にかける時間は長く、SNSのスクロールで見逃しがちな広告と比較しても、ユーザーのアテンション獲得が見込めるため、高い広告効果が期待できるという。

写真 「どのような記事に広告を掲載するか」「ユーザーがどのような記事を読んでいたか」などを分析し、最適な広告を配信することで、新規ユーザーの獲得も実現しているという

「どのような記事に広告を掲載するか」「ユーザーがどのような記事を読んでいたか」などを分析し、最適な広告を配信することで、新規ユーザーの獲得も実現しているという

また井料氏は2025年に予定されているサードパーティCookie規制(*1)に触れ、「同一ユーザーの特定が難しくなるなど、特にDSP広告や膨大な広告枠を束ねるアドネットワークで混乱が起きる可能性がある」と懸念を示した。
しかし、Outbrainは、先述のように膨大なユーザーの興味関心やキャンペーンデータをAIテクノロジーにより 、キャンペーンの最適化に活用することで、Cookieに頼ることなく、最適なユーザーに最適なタイミングで最適な広告を配信することが可能であるという。具体的にはコンテキストターゲティングやインタレストターゲティングといったターゲティング手法により、「どのような記事に広告を掲載するか」または「ユーザーがどのような記事を読んでいたか」などを分析し、最適な広告を配信することで、新規ユーザーの獲得や高いキャンペーンパフォーマンスを生み出すことができるという。

*1
2024年7月22日、GoogleはサードパーティCookie規制に対する新たな方針として、これまで推進してきたCookie廃止の取りやめを発表した。しかしながら、サードパーティCookie規制の背景にある個人情報、プライバシーを保護するためのニーズや業界動向に変化はない。よって、各プラットフォームは引き続き、ユーザーのプライバシー遵守を優先した取り組みを進めていくことが求められている。(追記)

最後に、井料氏はユーザーのアテンションを獲得することにフォーカスした新しいブランディングソリューション「Onyx(オニキス)」を紹介。ユーザーのエンゲージメントが発生する瞬間を予測するAI技術の活用により、ブランド企業が求める目標達成に向け「ただ画面に表示されているだけの広告」以上の価値を提供すべく開発されたサービスであるという。化粧品や自動車メーカーの実績を紹介し、潜在顧客へのアプローチやブランド企業のキャンペーン効果向上などに活用してほしい、と述べた。そして、8月に開設となる大阪支社の紹介にて、締めくくった。

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