「やはりHONDAは走りなのだ」茶の間の共感得る/本田技研工業「ZR-V」CM

6月に発売された、HONDAの特別仕様車「ZR-V BLACK STYLE」の新CMを、元SUBARU宣伝部長の岡田貴浩さんが解説します。

本田技研工業 ZR-V「SUVこそ、走れ。」篇(30秒)

「茶の間」が「いいな」と思うのが良いCM

クルマのCMは大きく2種類あります。ひとつは「ブランド・商品寄り」、もう一つは「販促、プロモーション寄り」。その差は発信者の違い、または発信者がその時おかれた環境の違いによります。例えば「愛車無料点検実施中」とか「低金利キャンペーン」などが後者の典型です。

個人的に、これからクルマを買おうと思っている方に、プロモーション的なCMはいかほどの効果があるのか疑問ではあるのですが、いわゆる国内営業本部的な部門では「今月の目標台数をクリアするためにこういう施策をつくったから大いに宣伝しよう」ということになりがちです。そしてHONDAのCMはたまにこういった発信者側の「思い」が強いCMが多い気がしていました。

クルマは消費財と違い、すぐ「明日買おう!」という商品ではないので、茶の間(CMを見ている側)が「HONDAっていいな」「このクルマいいな」「なんだか好きだな」と思ってくれ、それが蓄積されて「買おう」という気持ちまで膨れることが何よりも大切なことだと思います。それには意外と時間がかかります。

1980年代、歴史に残る名作CM「HONDA ワンダーシビック」のCMがいまでも大好きです。ルイ・アームストロングの名曲“What a wonderful world”を背景に、自然のなかにたたずむシビック、という至ってシンプルなクリエイティブですが、その時代の感覚に合致し「茶の間」が「いいな」と思う素敵なCMでした。

「情緒価値」か「機能価値」か、という議論がよくあります。クルマは高額商品だから、このワンダーシビックみたいに「なんだかいいな」という「情緒価値」が大事なのだという方もいらっしゃいますが、例えば「ぶつからないクルマ?」的な「機能価値」であっても、要は「茶の間」が「この商品いいな」「このブランドいいな」と思っていただくことが大事だと思うのです。


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