とにかくわかりやすく「ブロックチェーン」の仕組みを説明します。

前回のコラムでは、web3を知った私が「ブロックチェーンは世の中を変える技術だ!web3すげー!」と大興奮し、ひょんなことからweb3事業プロデュースを手掛ける博報堂キースリーの代表に就くまでを書かせていただきました。

しかし「web3」や「ブロックチェーン」という用語や仕組みは、まだ世の中であまり知られておらず、業界の方以外とは、このあたりの話がしにくいのも事実。

本日は「web3」や「ブロックチェーン」などをできるだけカンタンに説明してみます。

が、web3の範囲は本当に広く深く、本内容と違う解釈やご意見をお持ちの方も多くいらっしゃると思います。こういう考え方もあるのだな、と温かく見守っていただけますと幸いです。また私はまだまだ勉強中ですし、シーケンサーが、インデクサーが……と言われているときには、シークワーサーサワーの絵が浮かんでいることもありますが、ご容赦ください。

まず、「web3」とは「ブロックチェーン」技術がベースとなっている「分散型のインターネット環境」ことなのですが、まずはその「ブロックチェーン」から説明させてください。

「ブロックチェーン」とは「分散型台帳技術」

「ブロックチェーン」と聞くと、金融や貨幣をイメージする方が多いと思いますが、それは正しいです。ブロックチェーンは、複式簿記の進化版。AさんがBさんに1ビットコイン(ビットコイン=デジタル通貨)を送って、BさんがCさんにそのうちの0.5ビットコインを送って……というやり取りを全て台帳に記載し、その台帳が更新されるさまを多くの人が一緒に見て「ふむふむ間違いないですな」と確認し合う技術です。

私は、ブロックチェーンは日本語で言ったほうがわかりやすいと思います。「分散型台帳技術」。「分散」してみんなで確認し合っている「型」の「台帳」です。

イメージ 「分散型台帳技術」

仕組み上、Aさん→Bさん→Cさん~~Yさんの全員で台帳を管理しているので、誰かが取引を遡って勝手にBさん→Cさんの取引の数字を変更すると他の誰かが気づき、不正を指摘することができます。誰か一人に依存しないからこそ、安全だと言われているのです。

決して、データのブロックをチェーンでぐるぐる巻きにしてどこかに隠してセキュリティを担保しているわけではありません。むしろその逆で、“超オープンなので安全”、という世界観です。

さらに、やや雑な説明かもしれませんが、Aさん→Bさんというやり取りにペタッと画像を貼り付けたら、それが「NFT」になります。たとえば最初に有名クリエイターである田中さんがNFTをつくって、鈴木さんを経由して、いまは佐藤さんが持ってます、という場合。世の中の人が皆で「ふむ、田中さんがつくったということは間違い無さそうなのでたしかにこのNFT本物で、鈴木さんを経由して、いまそれを佐藤さんが持っているのですね」ということを確認できる状態である、ということです。

「本当に自分のモノである」、ということ

もうひとつのポイントは、この台帳は決して誰かのものではないということ。たとえばビットコインという台帳はサトシ・ナカモトという謎の人物かグループがつくったものの、権利をほとんど保有していません。ですので、台帳自体は社会の公器とも言われます。

現状web2(SNSなどに代表されるような、情報の流れが双方向な Web の時代)のサービスでは、すべてのデータは誰かが所有するサーバに存在して、そこにあるデータは本質的には自分のものだと言えない(サーバがデータを消したらおしまい)ですが、この誰のものでもない台帳の上にある通貨やNFTなどは、本当に自分のものである、という文脈で会話されるのです。

ではこの台帳はどのように運営されているのでしょうか。

台帳上で仮想通貨やNFTをやり取りするたびに、利用者が少額の「ガス代」と呼ばれる台帳使用料を払う仕組みになっています。その使用料を徴収し、この台帳の未来を信じる人たち(台帳上の取引を確認する作業をしている「バリデーター」と呼ばれる人たち) が運営をしている、という構図です。今の世の中に当てはめると、メールを送るたびにお金がかかる感じですね。

そんなのイヤだ!と思われるかもしれませんが、フリーメールが無料なのは、広告費としてメールシステム運営費が賄われているから、だと思うのですが、それを自分たちで払うというシステムです。このあたりは今後、現在の広告ビジネスと同じように「15秒の動画を見たらガス代はスポンサーが払う」、といったモデルは出てくると思います。

ブロックチェーンの登場は、
紙の発明と同じくらいのインパクトがある

こうした技術がベースとなっているのが、「分散型」のインターネット環境を元にしたweb3の世界です。

私はブロックチェーンは紙の発明と同じくらいのインパクトがあると思っています。これまで紙でしか信頼が担保できなかった全ての事柄を、デジタル上で再現することができる技術。それがブロックチェーンだと思うのです。

イメージ web3とは

例を挙げると、貨幣や絵画、卒業証書、登記簿。もちろん企業のポイントカードなども“紙”からweb3へ移行できます。たとえば今は転職のときに卒業証明書を大学から“紙”で取り寄せ、それを”紙”で会社に送っていると思いますが、将来的にはNFTを送るだけで済むはず。大幅に手間が省けますよね。このように、少しずつ社会に使われて便利になっていくと思います。

イメージ 貨幣や絵画、卒業証書、登記簿。もちろん企業のポイントカードなども“紙”からweb3へ移行できます

NFTブームの初期に、猿のイラスト101点のNFTが約27億円(!)で売れて大きなニュースになったことがありましたが、それはNFTの本質とはかなり異なります。ごく一握りの価値がある絵と、そうではないのにNFTであれば全て価値があるかもしれない、というような見え方をされてしまったことは、その本質を誤解させてしまうため業界的にはアンラッキーでした。NFTだから価値がある、というのは、紙だから価値がある、というのと同じくらいヘンテコリンなことがおわかりいただけると思います。

ここまで、ブロックチェーンの価値を感じていただけましたでしょうか?

「で、紙をデジタル上で再現できたらどんな良いことがあるの?」というご質問が飛んできそうです。冒頭でweb3とはブロックチェーン技術を活用したもの、と申し上げました。次回は続いて、とにかくわかりやすく、「web3」の仕組みを説明してみます。

また2週間後にお会いしましょう!

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重松俊範(博報堂キースリー 代表取締役社長)
重松俊範(博報堂キースリー 代表取締役社長)

1978年生まれ、中央大学法学部卒業。2001年読売広告社入社。国内で不動産広告の営業を経験した後、27歳で中国に渡る。読売広告社の上海支社と台湾支社を立ち上げ、クリエイティブディレクター&支社長に就任。上海・広州・台湾に合計12年間駐在。帰国後、他の広告会社やXR企業でのメタバースビジネス展示会事業の管掌取締役を経て、2023年1月に博報堂キースリーの設立とともに代表取締役社長として参画。三児のパパ。趣味はカメラ、写真も動画も撮ります。

重松俊範(博報堂キースリー 代表取締役社長)

1978年生まれ、中央大学法学部卒業。2001年読売広告社入社。国内で不動産広告の営業を経験した後、27歳で中国に渡る。読売広告社の上海支社と台湾支社を立ち上げ、クリエイティブディレクター&支社長に就任。上海・広州・台湾に合計12年間駐在。帰国後、他の広告会社やXR企業でのメタバースビジネス展示会事業の管掌取締役を経て、2023年1月に博報堂キースリーの設立とともに代表取締役社長として参画。三児のパパ。趣味はカメラ、写真も動画も撮ります。

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