心動かされるCMの背後にうかがえる、骨太なブランド像/サントリー「天然水」CM

ブランドの未来を提示するのは広告主の仕事

どうしてこのようなCMが企画されるのだろうか? と、CM巧者のサントリーだからね~で、済まされない落ち着いたブランド戦略があるんだろうなと感じます。恐らく、「こんなCM作れ!」と上司に言われている、広告宣伝担当は多くいるのではないかな……と想像します。

この「こんなCM作れ!」と言わしめてしまうそのコトに、多くの日本の広告・クリエイティブに対する大きな問題が潜んでいると思っています。

確かに、広告会社に広告の企画・最終的な制作まで依頼はしています。現在は、そのシステムが出来すぎているのか、普通の買い物をするかの様に、依頼したら寸分違わず、その発注物が出来てくると思われている。その企画(クリエイティブとも言われますが…)は、車や建物のような寸法があるわけではなく、多くの人の解釈を介して広告・CMは作られます。

滅茶苦茶、アナログというか人間くさい、モノを作るプロセスなのかもしれません。その企画に関わる全ての人達に対して、対象ブランドの考え方なり、未来像が共有化されてこそ、ありたい姿に向かい始めます。

それは、広告主の仕事であり、広告主しかできない仕事だと私は思っています。

サントリーさんは、昔からそれを継続してきているし、社内の方々も引き継いでいらっしゃる。一朝一夕には、真似できない。脱帽です。

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名久井貴詞

なくい・たかのぶ/1958年青森県八戸市生まれ。武蔵野美術大学卒業後、1983年味の素入社。企業内クリエイターとして、パッケージデザインの開発やテレビCM・新聞・Webなどの広告全般の企画・制作に携わる。2017 年、クリエイティブ統括部⾧として味の素のグローバルコーポレートロゴデザインを制作し、世界一斉に改定を実施した。2021年に退社。現在はクリエイティブディレクターとして、また大学での講師活動も行っているほか、2023年から日本広告制作協会(OAC)理事長を務める。

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