ovgo Bakerというヴィーガンのアメリカンクッキーを製造販売している企業がある。彼らは2019年から活動を始め、2020年5月に法人化。2021年に一号店(日本橋小伝馬町)をオープンした。その後、コロナ禍でもECが大忙しで、着実に成長、現在の店舗数は4店舗、その他取扱店舗をどんどん増やしている。
Photo: ovgo Baker提供
創業メンバーが、アメリカで食べたクッキーに魅せられて、それを元に、美味しく、社会や地球に優しい、みんなが嬉しいクッキーを作ることを目指して始まったブランドがovgo Bakerだ。彼らのクッキーは、動物性原料を一切使わず、環境に配慮した製造方法を採用している。彼らの目標は、ただ美味しいだけでなく、持続可能で社会に貢献できる商品を提供することだ。
昨年春。ニューヨークに視察に来ていたovgo Bakerの経営陣と知り合い、それ以来その活動に注目している。中でも注目すべきは、2022年にB Corpという国際認証を取得したことだ。B Corp認証とは、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証で、非常に厳しい基準を満たす必要がある。この認証を取得することは、企業としての社会的責任を果たすための重要なステップにつながる。
B Corp認証を取得するためには、企業が社会や環境に与える影響を評価するための様々な質問に答え、詳細な情報を提供する必要がある。評価は5つの主要なカテゴリーに基づいて行われる:「Worker(ワーカー)」「Community(コミュニティ)」「Environment(環境)」「Governance(ガバナンス)」「Customer(カスタマー)」だ。これらの評価基準には、企業がどれだけ多様性、公平性、包括性(DEI)を重視しているかも含まれる。
この認証を取得することは容易ではないが、ovgo Bakerはその挑戦に立ち向かい、見事に取得した。このプロセスを通じて、企業としての社会的責任を果たすために必要な取り組みを深く理解し、それを実践する姿勢を示したわけだ。
「認証なんてどこかが定めたものである」と言ってしまえば元も子もない。しかし、取得するにあたって、現在のグローバルなスタンダードとして社会が求めていることを知り、それと向き合おうとする姿勢のある企業と、最初からそれさえしようともしていない企業と、どちらが現在の自分たちの姿、そして、関わる社会や環境に対して真摯に向き合っているだろうか?しかも、ただ取得して終わりではなく、この認証は更新も必要になる。したがって、常に自分たちの行動をアップデートし、さらに向上していく意識を持つことになる。それを一つの企業の行動指針として取り入れているという点でも非常にスマートだと言える。
このB Corpの認証を取得した企業は、そのマークを掲示することができる。ovgo Bakerの場合、取得できた際にプレスリリースを出し、店舗にはB Corpマークをペイントしている。画像にあるように、ガラス張りで中での作業を購買者に公開するという透明性のあるプレゼンテーションをとり、そのガラスの部分にB Corpの認証マーク「B」を掲げている。そして、一部の商品にはB Corpマークを付して販売している。また、投資家向けにはB Corpの認証を取得していることを積極的にアピールしているそうだ。
Photo: Niena Etsuko Hino
Photo: Niena Etsuko Hino
Photo: ovgo Baker提供
Photo: ovgo Baker提供
先日、筆者が視察で出向いたNYで開催された展示会でも、いくつかの出展ブランドが、展示ブースのディスプレイに「B」を掲げていた。これは、分からない人には分からないかもしれない。しかし、その重要性を知っている人や、取得した経験のある人々同士の距離感を一気に縮め、そのブランドの信頼は強くなる。
認証や資格は、ただ取ればいいというわけではない。取る過程で何を学んだか、そして取得した後は学んだことを踏まえて掲げた宣言に嘘がないよう有言実行で実践行動を重ねていくことが何よりも重要。会社の存在意義や意識を改めて試され、ブランドであることがどういうことかを自覚させられてハッとすることもあるだろう。それにより、その会社に所属しているそれぞれが自覚を持ち、同時に自信を持ち、顧客に向き合うことができるようになることにより、一層信頼を得やすくなるとも言える。これはブランディングの本質であり、社会や消費者との約束だ。ブランド側がそれを果たそうと努めること、それをもってビジネスとして成果を上げていくことこそが大事なのだ。
次回のコラムでは、B Corp認証取得の背景と、その取得過程での苦労についてさらに詳しく見ていこう。