ブランドの在り方とは約束―ovgo BakerがB Corpを取得した理由(中編)

前編では、ovgo BakerがB Corp認証を取得した背景についてお伝えした。中編では、認証の意義とその取得過程での苦労に触れ、ovgo Baker CEO髙木里沙氏へのインタビューを通じて、認証取得の具体的なプロセスを紹介していこう。

写真 人物 髙木里沙氏

Photo: ovgo Baker提供

B Corp認証は、単なるラベルやステータスシンボルではない。それは企業が持続可能性と社会的責任に対する真摯なコミットメントを示すものだ。そして、その過程で得られる教訓や経験は、企業の成長と進化に大いに貢献する。ovgo Bakerの場合も例外ではなく、認証を取得するまでの道のりは決して平坦なものではなかったとのことだ。

ovgo BakerがB Corp認証を取得する過程で直面した最大の課題の一つは、データの収集と管理。B Corp認証の申請には、企業がどのように環境に配慮し、社会に貢献しているかを示す詳細なデータが求められる。例えば、エネルギー消費や廃棄物の管理、従業員の福利厚生やコミュニティへの貢献など、幅広いカテゴリーにわたる情報を収集しなければならない。

また、B Corp認証の評価プロセスでは、企業のガバナンスと透明性も重要な要素として評価される。これは、企業が内部でどのように意思決定を行い、どのようにしてその決定を外部に伝えているかを問われる部分だ。ovgo Bakerはこの評価プロセスを通じて、自社のガバナンス構造を整え、より透明性の高い運営を目指す取り組みを強化したということになる。

さらに、B Corp認証の取得には、企業の社会的責任に対する取り組みが評価される。ovgo Bakerは、従業員に対する公平な待遇や、コミュニティへの貢献活動を通じて、社会的責任を果たすための具体的な行動を示した。これには、地域のイベントへの参加や、地元のサプライヤーとの協力関係の構築などが含まれるそうだ。

このB Corpの認証を取得している企業は、2024年8月8日現在、世界中で8751社、日本の企業は43社(ヘッドクオーターの所在地が日本)。そのうちの1社がovgo Bakerで、日本国内の飲食会社でこの認証を取った初の企業となっている。このB Corp、日本でも知られている世界的企業で、社会的責任に意識の高いパタゴニアもしっかり取得している。allbirds、Warby Parker、Aesopなども同様だ。

ここでチェックできるので、是非とも確認をしてみてほしい。
https://www.bcorporation.net/en-us/find-a-b-corp/

ovgo Baker 髙木里沙氏インタビュー

―B Corpの認証を、御社が取得しようと思ったきっかけを教えてください。

髙木氏:取得しようと考えたきっかけは、「グローバルなサステナブル・ライフスタイルブランドになる」という弊社のミッションのためです。グローバルで戦うためには、まずB Corpを取得することがスタートラインに立つことであり、最低ラインとして不可欠だと考えました。

―B Corpの認証取得が御社のブランドとしての存在にどのように関係していますか?

髙木氏:正直に申しますと、国内ではまだまだB Corpの認知度が低いため、常に大きなポジティブな影響があるということはまだありません。ただ一方で、to B(企業向け)の姿勢としては、認証されていることを認知していただけることも多く、特に大手企業には評価をしていただけます。実際に認証を取得していることをきっかけに弊社との取り組みを前向きに検討してくださるケースも多々あり、これは大変ありがたいことです。このようなポジティブな影響がどんどん広まっていくことで、B Corp認証の認知度が高まることにつながると考えます。また、B Corpを取得したことで、日本のB Corpコミュニティにおいて情報交換ができることは非常にプラスになっています。取得するプロセスを通ってきた企業同士のつながりは大変心強くとても価値があります。

―申請プロセスで大変だったことを教えてください。

髙木氏:申請プロセスにおいて大変だったことは、ガバナンスの加点ポイントが日本基準ではなく、米国基準の質問になっていることです。日本に存在しない事柄もあるため、加点してもらえない設問が多く存在することです。また、データを色々と集める必要があり、それが非常に大変でした。しかし、そのような中でも、設問が本来意図していることをうまく掴み、それに対して納得してもらえるように合理的な説明をすることで、一部理解してもらえることもありました。特に配点が多い設問については、そこにある本質的な意味や審査側が求めていることを分析し理解する作業も加わり、非常に大変でした。

―申請プロセスで注意すべきことを教えてください。

髙木氏:申請のために提示を求められる内容として、事業を運営する上で使用するエネルギーやごみの排出量等のデータがあります。それを詳しく示すには、関係する可能な限り全てのデータを取得する必要があり、非常に時間がかかります。また、申請のための設問が全て英語であり、B Corpのアナリストとのコミュニケーション(メールおよびオンライン面談)も基本的に英語で行われるため、申請する企業側の担当者は自分たちの事業を理解していることに加え、一定以上の英語力が求められます。そして、認証取得後も3年ごとに再申請する必要があるため、申請時に提出したデータを継続的に収集する必要があるのも注意すべき点です。

―日本の企業で、取得したらいいと思われる業種は何だと思いますか?

髙木氏:「どこの業種が取得すると良い・取得してほしい」というよりは、より多くの企業がこれに興味を持ってほしいと考えます。その中でも特に日本で影響力のある、“大企業”と呼ばれる企業が進んで取得することが望ましいと考えます。そうすれば、それを通じて、B Corp認証の存在とその認知度、重要性が広まり高まります。その流れができると、一般消費者にもB Corpの意味が浸透します。是非そうなってほしいと思っています。

次回のコラムでは、インタビュー後半として、ovgo Baker CEO髙木氏が語る今後の展望と、B Corp取得をはじめとした認証取得への筆者の考察をお伝えする。

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日野江都子(企業ブランディング・プロデューサー/ 国際イメージコンサルタント)
日野江都子(企業ブランディング・プロデューサー/ 国際イメージコンサルタント)

東京生まれ、ニューヨーク在住。フリーランスを経て、2004年、ニューヨークでリアル コスモポリタンを設立。日欧米亜合わせ数千人のハイプロファイリング・クライアント(日系企業や外資企業日本法人の経営層、政治家、財界人、セレブリティーなど)の包括的なブランディングを手がけてきた。施策提案など総合的なコンサルティングを実施し、高い評価を得ている。主な著書『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社) 、『Premium Image Management for Men』DVD監修(SONY PCL)、『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム) など。

日野江都子(企業ブランディング・プロデューサー/ 国際イメージコンサルタント)

東京生まれ、ニューヨーク在住。フリーランスを経て、2004年、ニューヨークでリアル コスモポリタンを設立。日欧米亜合わせ数千人のハイプロファイリング・クライアント(日系企業や外資企業日本法人の経営層、政治家、財界人、セレブリティーなど)の包括的なブランディングを手がけてきた。施策提案など総合的なコンサルティングを実施し、高い評価を得ている。主な著書『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社) 、『Premium Image Management for Men』DVD監修(SONY PCL)、『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム) など。

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