前編と中編 では、ovgo BakerがB Corp認証を取得した背景とその意義、B Corp認証取得の具体的なプロセスやその影響について詳しく掘り下げた。
後編では、ovgo Baker CEO髙木里沙氏が抱く今後の展望と、B Corp取得をはじめとした認証取得への筆者の考察をお伝えする。
―2024年の今、ovgo Bakerが目指していること、具体的に計画していることがあったら教えてください。
髙木氏:現在よりブランドを皆さんに知っていただき、広めていくために、ECと卸に注力して行きます。以前JALにお取り扱いいただいた実績もありますので、エアラインやホテルに展開していくことも計画しています。また、多くの方に購入経験をしていただきたいので、スーパーやコンビニにも展開していきたいです。
実店舗におきましては、4店舗それぞれの地域性や雰囲気の違いを活かし、お越しくださる皆さんに楽しんでいただけるような商品展開を行って参ります。そして、米国をはじめとしたグローバル展開も視野に入れていますので、一つずつ着実に進めて参ります。
髙木氏のお話を伺い、サステナブル、そしてDEIがどういうことか、どう判断することができ、自分たちの企業はそれができているか?何をお手本にすればいいのか?それを知る一つの指針がB Corpであり、企業ブランディングの根幹を補完するものだと筆者は改めて実感している。そして、何かを知ることで企業も人も確実に前進するということも。正に「知識は力なり」は真理だ。そして、その知識を得たところで止めることなく行動に移していくことで、一層前進できる。認証を取得するプロセスとは、知識を行動に移すための初動コーチのようなものだと思えば良い。
『グローバル・スタンダード』『世界基準』『世界標準』という言葉を日本企業の掲げる文面上に見かけることが多い。また、SDGsの丸い虹色のバッジを胸につけている企業トップやその会社に所属している人々も多く目にする。しかし、「どんなふうにグローバルスタンダードなの?」「どんなふうにサステナブルなの?」と聞きたくなる。SDGsバッジは何所の誰からの査定も必要なく、ただお金を出せば購入できる。正直なところ筆者はあのバッジをつけている方々を、一歩離れて観察してしまいがちだ。「そこには、世界や地球の未来に対する意識を整理し、問題のあり方を自分なりに把握し、そのための行動を起こすプロセスがあったのだろうか?」とその様子を確認したくなってしまうのだ。同時に「あのバッジをつければサステナブルになれたらいいのに」とも本気で思ってしまう。
B Corpが全てで正義だとは言わない。しかし、一つの明確な物差しを作り、世界基準として掲げ、その査定を提供している国際団体として存在している。そして、日本からでもその査定を受けることができる。一方で、ovgo Bakerの髙木氏のインタビューでもお分かりいただける通り、その申請過程は決して甘っちょろいものではない。その理由は、世界には解決しなければならない問題がたくさんあることを示しているからだ。
だからといって、重苦しく考えることはない。まずは、どんな基準があるのかを知ることから始めればいい。それを知ることで、それが世界の問題点であり解決をすべき事柄だと理解できる。世界がもっと良い場所になるように、まずは知ること、それには、自分の企業のあり方を一つの「世界基準・標準」で測ってみることだ。今がその時ではないだろうか?
Photo: ovgo Baker提供
ovgo Bakerのような企業が率先してB Corpを取得し、企業ブランディングを表現する一つとして掲げてその存在を広めることで、日本の企業や消費者にとってサステナビリティやDEIの重要性がさらに浸透していくことを期待している。そして、B Corpを通じて、企業は社会的責任を果たす道筋を知ることができ、消費者は信頼できる企業を見分ける一つの指針を持つことができるようになる。最終的には、社会全体が持続可能な未来に向かって進んでいくための一歩を踏み出すことができるのだ。
ovgo Bakerにおいては、彼らのブランドを通じて、消費者は美味しくヘルシーなクッキーを購入し食べられる、それだけでも単純に幸せなところに、それを選び購入するという「意志ある選択と行動」が世の中のため、そして地球のためになっていく。正に一石二鳥だ。消費する側としてもそれを難しくなく選べるというのは、「かっこいい」そして「feel good(気分がいい)」ではないか。これもブランド側が顧客に提供することが望まれる重要なショッピングエクスペリエンス。しかし、実際はそれを提供できている企業やブランドがどこなのか一般人にはなかなか判別できない。だからこそ一つの明確な指針がB Corpの認証と言える。厳しい審査にわざわざ臨んでそれを取得した、世界を幸せにすることを本気で目指している企業であることはわかるだろう。
購買とは、その会社への一票を入れること。そして、その一票は、世界を少しでも良い場所にするための一票でもあると筆者は思っている。そして、自分の小さい購買活動が、自分も幸せにして、他者、そして社会や地球も良くすることができるのであれば、これほど嬉しいことはない。今後も、ovgo Bakerのような企業が増え、多くの企業がB Corp認証を目指すことで、より良い社会が実現することを願っている。