クッキーレス対応、個人情報保護強化など、デジタル環境が目まぐるしく変わる昨今。顧客の心をつかむためには、顧客情報など膨大なデータを分析し、「ファンマーケティング」のための打ち手を積極的に設計していく必要がある。しかし、具体的にどのようにデータを分析していけばいいのかいまいちよくわからない、それができる人材がいない…という悩みを抱えている企業も多いのではないだろうか。
本記事は2024年7月に開催された「宣伝会議リージョナルサミット2024夏 in 名古屋」から、注目セミナーをレポート。サッポロ不動産開発の福吉 敬氏はデータを見る理由とデジタル人財育成のあり方について、ヤプリの金子 洋平氏はアプリプラットフォーム「Yappli」の最新事例を紹介した。
データを開示し、全員が同じ方向を向く
サッポロ不動産開発でDX推進を手がける福吉氏は「広告を考える時にデータを見ることは必要不可欠」と話す。以前は、広告といえば新聞、ラジオ、テレビなど限られたものしかなかったが、現在はデジタルサイネージやウェブ上などいたるところに存在する。1つのビジュアルに1つのメッセージを込めて、大量に見せて伝播させていくという手法がとられていたが、メディアが多様化している現代においては、消費者の情報接触機会がどんどん増えているため、「テレビCMを流しておけば大丈夫」と言い切れない。
サッポロ不動産開発の福吉氏。限られた予算を有効活用するためにはデータを社内に閉じ込めておかずになるべくフラットに開示し、みんながデータを見れる状態にしておく必要があると話す。
限られた予算を有効活用するためには、自分たちのブランドを知ってほしいお客様がそこにどれくらいいて、何を求めているかを考えてメディアバイイングする必要があり、そのためには広告主のみならず、広告代理店、広告制作会社、メディア、ベンダーを含めたすべてのメンバーが同じ情報を把握して、同じ方向を向いていかなければならない。
そのためには、データを社内に閉じ込めておかずになるべくフラットに開示し、みんながデータを見れる状態にしておく必要がある。そのため、外部ストレージをレイヤーにわけ、メンバーごとに開示するレイヤーを決めて開示する。また、後から情報をさかのぼることができるよう、メールではなくSLACKなどのチャットツールを使うという環境も効果的だ。
「広告クリエイティブで最も重視しているのは『誰に』という部分」と福吉氏。
デジタル人材の育成やツール利用のポイントなど、中部エリアの企業にとって学ぶべき視点が多々あった。
ペルソナ設定などターゲット設定にはさまざまな手法があるが、想像で作るのではなくデータから知ることが最も有効だと話す。その理由は、ターゲットが可視化できれば結果を測定することができ、データはエビデンスとして説得材料になるため広告クリエイティブを継続させやすいからだ。データ分析にはグーグルアナリティクス(GA4)とサーチコンソール、ルッカ―スタジオを推奨しているという。これらは無料で使うことができ、初心者にとっても比較的わかりやすい。社内教育の際にも使いやすく定着しやすいという。全てのメンバーが情報を見れるようになれば、自らが必要なデータを取得しにいくことができ、それぞれの立場で打ち手を考えやすくなり、目標数値も具体的に設定しやすくなる。こういった環境を作り上げていくことで、企業・ブランドの戦力が格段に上がっていくはずだと福吉氏は締めくくった。
アプリを顧客との架け橋に。CRMにも
続いては800以上のアプリを開発・支援しているヤプリの金子氏が登壇。ファーストパーティーデータの活用が重要であることを説明し、それには自社アプリが活用できることを紹介した。ユーザーの手元にあるスマホに、企業との入り口ができること、スマホに最適化されているために分かりやすいこと、プッシュ通知が利用できることをその理由に掲げた。
ヤプリ 執行役員CCOの金子氏。ファーストパーティーデータへの意識が高まるなかでの、自社アプリ活用の有効性を説明した。
その後、全国各地の企業がどのようにアプリを活用しているのか、具体事例を交えて解説。まず「南海電鉄」のアプリでは、商業施設とお客様とのコミュニケーションを深化させる目的で開発。複数施設のキャンペーンやクーポン配信などを一括することで、アクティブユーザー数が3割増加。取得したデータを元に、次なる打ち手を考案できるという。
「ピエトロ」の公式アプリは、可愛らしい世界観によりユーザーが愛着を持てるアプリに仕上がっている。実店舗でもオンラインでも使える共通ポイントシステムがアプリ内に組み込まれ、アプリ限定キャンペーンなどを展開。アプリ経由でのショッピングや、アプリ内に掲載されているレシピの閲覧ユーザーも増加。プッシュ通知によるお客様アンケートは、2,000件以上の回収となった。
ピエトロやシャボン玉石けんなど、全国各地の企業がどのようにアプリを活用しているのか、具体事例を交えて解説。
福岡を代表するメーカー「シャボン玉石けん」は、アプリ活用により新しいファン獲得を目指している。紙の会報誌と連動し、AR機能で楽しめるコンテンツを盛り込んだり、製品使用ノウハウを紹介する動画を見れるようにしたりと、アプリ限定のコンテンツも用意。客単価アップに加え、客層の広がりも見せている。
ラーメンレストラン 「どうとんぼり神座(かむくら)」は、コアファン獲得のためにアプリを活用。これまでの「替え玉無料券」のような、無差別に配布するクーポンではどれほどの効果があるのか可視化できていなかったが、お客様の会員ランクごとに適切なコミュニケーションを発信し、クーポンの利用を促進させると同時にコアファンを増やしている。
クリーニングの白洋舎は、新しい集配サービスの認知度アップにアプリを活用。同時にお客様情報を管理し、お店をより好きになってもらうコミュニケーションをとっている。
「プロント」では、ロイヤルカスタマーの位置づけをアプリ内で行い、購買履歴をもとに施策を練る。
プロント、白洋舎、お仏壇のはせがわなど、様々な企業でYappliが活用されている。
「お仏壇のはせがわ」は、若い世代に向けた葬儀に関する情報などをアプリに盛り込み、V字回復を実現。故人の情報を入力することで、時期ごとに適切な情報が配信されるという。
アプリが販促ツールでありながら、CRMとしても機能させることができるという点を強調した。
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株式会社ヤプリ マーケティング本部
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