そのほかにも、例を見てみましょう。「福袋」というネーミングはかなり秀逸だと思っているのですが、そもそものはじまりは、年末の売れ残り商品を紙袋に詰め込んで、お正月に売ったものでした。福袋、という名前をつけることで、年末の売れ残りが「縁起のいい風物詩」のように見えてきます。
さらに、こんな例もあります。ニューヨークで明太子を売ろうとした人が、商品を直訳して「cod roe(タラの卵)」として売ったら全く売れなかった。でもそれを「HAKATA spicy caviar」という名前で売ったら、シャンパンに合う、とNYっ子に爆売れしたらしいですね。
これらはそれぞれ「なるほどそう言われれば魅力的に見える」という言葉を添えて価値を上げた、コピーの好例だと思います。
よいコピーを判断するための2つの基準
コピーとは、商品やブランドに魅力的な目線を与えるものだということがわかりました。では、どんな言葉が「魅力的」なのでしょうか。好例だけを見て感覚的に良いと感じるだけでは、たくさんあるコピーの中から優れたものを選べないし、自分で考えるときにも指標がなくて迷いますよね。
入社してこの業界に入って20年、いまのところの答えです。
指標は2つ、「価値の発見」と「感情の設計」があるコピーが、いいコピーです。
「価値の発見」とはつまり、その言葉が、事実や情報や概念など、本質的に実のある内容で読む人に何かしらの「価値」を発見をさせているか、ということです。これがあると「ハッとする」「気づきがある」「新しい提案がある」「なるほど感がある」「知らなかった」「その手があったか」などの印象になります。
そして「感情の設計」とは、そのコピーを読む人の感情や、気持ちや、テンションを、狙ったとおりに設計できているかどうか、ということです。ここがうまくいくことで、「グッとくる」「エモい」「好き」「泣きそうになる」「ウケる」「かわいい」「勇気が湧く」などの気分をつくることができます。
まとめると以下のようになります。コピーって、事実や数字などのファクトっぽい名作も、感情を揺さぶられるような情緒的な名作も、幅広くあるなあと思っていたのですが、こういう整理をすることで僕はすっきりと腑に落とすことができました。
自分でコピーを考えるとき、こんな図や定義をいちいち気にしながら書いているわけではありません。ある程度は感覚や経験にしたがって書き広げていくのですが、そのあと自分で選んだり、クリエイティブディレクターとして世の中に届けるべきものを選ぶときに、この2つの指標を大事にしています。その思考や判断を、様々なかたちの様々な課題を乗り越えるためにくり返していく。そんな経験を重ねていくうちに、コピーライターとしての基礎ができていくのだと思います。
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