「原爆炸裂からの3秒間」を想像してもらうための広告、長崎新聞の平和メッセージ

長崎新聞は、8月9日の長崎に原爆が投下された日に広告を掲載する『平和企画』に2020年から取り組んでいる。
この広告は一貫して「想像力を抑止力に」をテーマに制作しており、5回目となる今年は30段と15段の誌面に、7つの5段広告を使い、「原爆炸裂からの3秒間を想像してもらうための原稿」を制作した。

原子爆弾は長崎市の上空500メートルで炸裂し、それから3秒のあいだに4000度の熱線が地上に降り注ぎ、人体に熱傷を与えた。その一瞬を想像してもらいたいと考え、ビジュアルは、炸裂時の光を集中線で表現している。
「『もしもいま、新聞を読んでいる自分の頭上で炸裂したら』、そう想像してほしいと考え、キノコ雲や当時の写真を使用せず、シンプルな線のみの表現としています」と、アートディレクター 江波戸李生氏。

30段の原稿に描かれた集中線の先には、コピーが配置されている。
「原爆は日常の頭上で炸裂する。ピカッ。強烈な閃光。次の瞬間、4000度の熱線がまちを焼き尽くす。かかる時間は、わずか3秒。あなたがこの文章を読み終えるころには、多くの命が消えている。」
そのコピーは90文字だ。
「人が1秒に読める文字数が15文字程度なので、このコピーは10秒程度で読み終わる分量です。原爆炸裂から3秒で熱線が放出されたあと、10秒後には爆風が3.7キロ地点まで到達したといわれています。文章を読み終わる頃にはまちは焼き尽くされてしまっている。逃げる間もなく、大切な人にさよならを告げる時間もないほどの、わずかな時間に多くの命が奪われた。その恐怖を感じてもらうことを意図しています」(クリエイティブディレクター 鳥巣智行氏)

そして、15段の広告には、炸裂から3秒後に何が起こったのか。そのイメージと共に「この3秒を繰り返さないために」、私たちが考えるべきことをメッセージする。

さらに5段の広告では、原爆炸裂から10秒、8分30秒、1時間、13時間、1ヶ月、10年、79年が経ったときに何が起こったのかを記している。

ファクトチェックを手がけた、長崎大学核兵器廃絶研究センター 特任研究員 林田光弘氏は「炸裂の3秒後から79年後の現在まで、その後遺症が今も続いていることを伝えたいと考えました」と話す。

8月9日の朝、新聞でこの広告を見た人はSNSでビジュアルを投稿するとともに、平和への願いをつづっている。長崎新聞では、同社サイトの平和企画のページに過去の新聞とともに、最新の広告を掲載。誰でもそのPDFをダウンロードできるようにしている。

スタッフリスト

企画制作 長崎新聞社、電通、電通九州長崎支社、Better、プラグ
スーパーバイザー 牟田雄一郎
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CD+C 鳥巣智行
AD 江波戸李生
ファクトチェック 林田光弘
D 鑓田佳広、小島幸菊
I 森田晶子
Web 小山健太、髙田優衣
Pr 福岡一磨、水野尾 賢一、永友 政彦
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