広告の掲載先を把握しないことがブランド毀損を招く結果に
━━SNSと広告の関係性についてはどうお考えですか。
長澤:これはインターネット広告全体の話になりますが、調査によると「自社の広告がどこに載っているのかわからない」と答えた広告主企業が全体の70%にものぼったと言います(内閣官房「デジタル市場競争本部最終報告デジタル広告市場の課題」より)。これは最初からメディアを指定して、さらに出稿する「面」までを指定していたマスメディアではありえないことだった。逆に言えば、そうすることで広告の信頼性を担保していました。
けれども、例えばネット広告の多くは、表示されるだけならメディアに広告費を払わなくてもいい。すなわちたくさん広告をばらまいて、クリックされた部分だけお金を払う方が効率的だ、という話になる。こうしてクリック率などをKPIのかなめにした結果、「クリックさえしてもらえば、どこに広告が載ろうが関係ない」という考えに至ってしまうのです。
ところが、出稿先を指定しないとフェイクニュース的なサイトに載ることもあるし、アテンションを狙うだけの公序良俗に反するような悪質なサイトに載る可能性もある。ブラックな組織やメディアに広告が配信され、自社の広告費が悪意のある組織・団体の資金として使われる可能性も否定できないわけです。
そうした倫理観をきっちりさせようというのが、2024年5月、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会が発表した「社会問題化するデジタルメディア上の詐欺広告に対する緊急提言」なんです。
この提言には、ネット広告に対する相当な危機感が表れています。アドバタイザーズ協会、すなわち広告主側が、詐欺広告の裏にあるエコシステム自体に警鐘を鳴らしているんですね。それに対して、30社のメディアからなるわれわれ「クオリティメディアコンソーシアム」も、賛同する応援声明を出す予定です(※対談後の6月6日に発表)。