月刊『宣伝会議』は2024年4月に創刊70周年を迎えました。周年を記念し、いま広告・コミュニケーションビジネスを取り巻く課題を有識者、実務家の皆さんと議論する座談会を企画。今回は、フェイクニュースやなりすまし広告問題などを引き起こしている「SNS」をテーマに、クオリティメディアコンソーシアム事務局長の長澤秀行氏と、ファクトチェック・イニシアティブ理事の澤野未来氏が議論します。様々な立場で多様なメディアに関わってきた二人から、複雑に絡み合った問題点のありかと、その解決への道筋について話を聞きました。
※本記事は月刊『宣伝会議』8月号に掲載したものです。記事の情報は6月上旬の取材時点の内容です。
対談の前半はこちら
デジタル空間ほど人間性がむき出しになる場はない
━━企業とSNSの関係について伺います。SNSはいわゆるトリプルメディアの3分類全てでの活用方法がありますが、まずはペイドメディア、広告媒体としてのSNSについてどうお考えですか。
長澤:非常に有効なやり方のひとつに、インフルエンサーマーケティングでファンをつかんでから、彼らを顧客として育てるというやり方がありますよね。そうしたUGCの活用には大きなメリットがあると同時に、怖い面も存在します。それは、SNSプラットフォーム上に特定の嗜好性を持ったユーザーコミュニティのデータが大量に溜まっているということです。
本来で言えば、そのコミュニティを対象にターゲティング広告を配信することは企業にとっては効果的で、かつ広告を受け取る消費者にとっても、自分にとって関心の高いテーマである可能性が高いのでメリットがある。ただ、それが逆利用されてしまったのが今回のFacebookのなりすまし広告なんですね。Facebookのユーザーターゲティング広告というのは、詐欺師から見れば非常に効率的で確度が高い。そういう悪利用に対抗するために、ターゲティングに関する様々な管理が必要になってくるわけです。
澤野:新聞社時代にあるイベントの募集にSNS広告を使ったのですが、数は多くないものの、ロイヤルカスタマーにつながることができ、SNSにおけるターゲティング広告の有用性を感じました。今問題になっている広告の多くはクリックをメインにしているため、拡散して、一回かぎりの認知ばかりを取ろうとしています。SNS上で形成されるコミュニティに焦点をあてて、そこで顧客とつながりロイヤルティを育んでもらうことに労力をかけるべきだと思いました。
長澤:そうしたファンたちに対して、アテンションを取るだけにとどまらず、いかに信頼性を高めるかが重要。そこはクリエイティブの力にかかっていると思います。