━━最後に、対談の感想をお聞かせください。
長澤:いままで私は、紙からデジタルまで獲得型の広告を40年近く経験してきましたが、澤野さんの「中の人」体験談をお伺いし、ネットマーケティングの真髄はやはり、ネットの双方機能を生かした顧客体験の深化をいかにさせるかだと改めて思いました。
獲得目的だけだと、よほどコンテンツや掲載メディアが魅力的で信頼性がないとユーザー心理から撥ねられてしまう時代です。顧客体験として魅力的なコンテンツ環境を提供しないと広告は忌避されるという意識を、マーケターも、メディアパーソンも持たないといけないと改めて感じた対談でした。
澤野:長澤さんとお話をしながら、この10年ほどの間のメディアやプラットフォームを取り巻くランドスケープを振り返ることができ、残念ながら後退した部分もあれば、少しずつ前進したところもあることが理解できました。
AIなどツールの技術革新があっても結局、善意や悪意を元に行為を行うのは人間であり、また組織の経営状態や経営層の考えで取り組みの熱意や方向性が変わるのは、メディアもプラットフォームも同じだと思います。そのような状況の中で安心安全を目指すには、結局のところはユーザー個々のリテラシーや教育が重要という点に帰結されると感じました。いま起こっている問題は根深く時代を超えたものであり、先人たちの取り組みに何かのヒントがあるのかもしれないとも思いました。