1+1を2以上に。理系マーケターのアイデアの生み出し方

小野寺洋氏は、根っからの理系でありながら長年編集者を経験。そしてダイレクトマーケティングの領域で活躍した後、現在は山登りの趣味が高じて、登山アプリ「YAMAP」を運営するヤマップで執行役員を務める、ユニークな経歴の持ち主です。小野寺氏はこれまで、どのような指針のもとキャリアを形成してきたのか。そして周囲から「アイデアマン」と言われる、その発想の源泉について、マスメディアン の荒川直哉が伺いました。

【前回はこちら】原点はオグリキャップ? 「人を動かす」力がマーケティングの面白さ

──佐賀大学の数学科を卒業後、ベネッセコーポレーショングループの編集プロダクションに就職されたそうですが、理系の学生の進路としてはなかなか珍しい選択だったのではないでしょうか。

そうかもしれませんね(笑)。でも、私は「進研ゼミ」の東大・京大を目指す受験生向けの数学の教材編集を担当し、その後は教材のプロモーションを担当していたので、数学の知識がけっこう役立ったんですよ。例えば、二次関数って覚えていますか?

──ええ、ありましたね。

受験生向けの広告やダイレクトメールに教材誌面の見本を掲載するのですが、私が担当する以前は二次関数のページをサンプルとして載せていたんです。放物線のグラフの形が、いかにも数学っぽくて見栄えがいいですし、なにより最初に習う単元ですからね。

でも、二次関数の問題はそんなに難しくない。受験生がよくつまずくのは、実は数列の問題だったりするわけです。だったら数列のページをサンプルにした方がいいんじゃない?と私は思ったのです。受験生の興味関心を引くツボが、手に取るようにわかったというか。

写真 人物 小野寺洋(おのでら・ひろし)氏

ヤマップ 執行役員 安全推進事業部長
小野寺洋(おのでら・ひろし)氏
1997年に佐賀大学理工学部数学科を卒業後、ベネッセコーポレーショングループの編集プロダクションに入社。『進研ゼミ』などの教材編集、販売営業に携わる。2003年広告制作のジェリーフィッシュへ転職。化粧品通販のJIMOS、ネスレ日本などでダイレクトマーケティングの経験を積んだのち、2019年にヤマップ入社。2022年より執行役員。

──ということは、会社のなかでもエース級の存在だった。でも転職することになったのは、何かきっかけがあったのですか?

率直に言うと、新しい刺激が欲しくなったんです。

私はもともと、飽きるということをネガティブにとらえていません。アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの「『今日が人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことは本当にやりたいことか?』と自問して、『ノー』の日が続くなら何かを変えるときだ」という、あのスタンフォード大学での有名なスピーチが好きで。「何かに飽きたときは、何かを変える良いチャンス」なんだと思っています。この言葉に背中を押されて最初の転職をしましたし、その後もずっと、キャリア形成の指針にしています。


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荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)
荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

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