1+1を2以上に。理系マーケターのアイデアの生み出し方

それで、ファンマーケティングに注力することにしたのですが、その時に、ネスレ日本でやっていた「ネスカフェアンバサダー」の考え方を応用しました。具体的には、ユーザーが自主的に紹介したくなるアプリ、参加したくなるアプリになるための施策を打っていきました。ユーザー会を開いて参加者に「YAMAP」の安全の仕組みを理解してもらい、さらにその先の登山者に「YAMAP」を勧めていただいたり、ゴミ拾いイベントを実施して登山をするきっかけをつくったり。とにかく口コミになりそうなネタをユーザーのみなさんに放り込んで、その伝搬効果をテストしていくという手法です。その成果あって、直近のダウンロード数は440万ダウンロードを突破(2024年5月時点)しました。

ベネッセで働いていたころに、アメリカの実業家、ジェームス・W・ヤングが書いた『アイデアのつくり方』を読みました。彼は本のなかで「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何者でもない」と主張しています。これを読んで、すっと気持ちが楽になりましたね。「アイデアマンになりたい」、「ゼロからつくらなくちゃ」ともがいていましたが、アイデアって、1と1を足して、2よりもっと大きなものをつくるということなのだと。そう考えるようになってから、私が考える施策はすごく幅が広がったなと思います。

──マーケターはいかに多くのデータを持っているかが勝負だ、みたいな説もありますが、小野寺さんの考えは違うようですね。

データはもちろん大事です。でも、こういうふうになると世の中をあっと驚かせることができるとか、自社の商品が人々に受け入れられるようになるとか、そういうアイデアがなくちゃ宝の持ち腐れです。

私はいろんなところで講演をするとき、冒頭でぐっと興味を引くために音楽をかけながら登壇することもあります。聴講者として参加したとあるセミナーで講師の方がやっていて、面白かったからまねをしました。参加費5万円は自腹でしたが、この手法をもう何度も使っているので、すっかり元が取れました(笑)。

また、比較的長時間(3時間半)の講演を行うこともありますが、その際は途中でペーパーテスト形式の「クイズ」を出題するなどして、講演の流れに抑揚をつけます。こうすることで聴講者は飽きないですし、なにより自分で解いたクイズの答えを知りたいから集中力が長続きします。

さらに、「穴埋め問題」は、“埋めないと気が済まない”という人の心理をうまく利用して出題しています。このような手法も、実はベネッセコーポレーショングループで受験教育に携わっていたからこそ気づいたこと。つまり「既存の要素の組み合わせ」なんです。

若い人から、「アイデアを出すにはどうしたらいいか」とよく聞かれます。私が言えるのはただ一つ、「いろんな経験を買ってでもしよう、組み合わせを考えよう」。これに尽きるかなと思います。

──ありがとうございました。

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荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)
荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

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